α2受容体(α2 adrenergic receptor) †
アドレナリン受容体のひとつ。アドレナリンα2受容体とも。
アドレナリン作動性神経においてシナプス前終末およびシナプス後膜に発現する。末梢組織においては血管や平滑筋細胞、脂肪細胞、腸、腎臓、内分泌細胞などに発現する。*1
アドレナリンα2受容体は主に中枢神経系のアドレナリン作動性神経に発現し、興奮・覚醒レベルの上昇を抑制することで、鎮痛や鎮静、筋弛緩などに関与している。また、脊髄ではα2受容体は後角表層の侵害受容経路に発現し、痛覚抑制に働く下行性抑制経路の作用点となっている。そのため、デクスメデトミジンやキシラジンなどのα2作動薬は、ヒトや動物の鎮痛・鎮静薬として使用されている。*2
この受容体への刺激は下行性抑制系が作動し、強力な鎮痛が起こる。*3
アデニル酸シクラーゼの活性を抑制し、細胞内cAMP濃度を低下させ、カルシウムチャネルを閉じてカリウムチャネルを開く。*4
α2受容体作動薬の腹腔内投与により、成熟哺乳類の視神経を再生させることが可能であることが報告されている。*5
以下の3つのサブタイプが存在する。
α2A受容体(α2A adrenergic receptor) †
α2受容体のサブタイプ。α2作動薬は主にこのα2A受容体を介して脊髄の侵害受容ニューロンの伝達を抑制する。
α2A受容体の機能的ノックアウトマウスによる実験によって、デクスメデトミジンやキシラジンの鎮痛効果の発現には、α2A受容体が必要不可欠であることが確認されている。。*6
α2B受容体(α2B adrenergic receptor) †
α2受容体のひとつ。腎臓や肝臓、脳、肺、血管などに発現する。末梢組織での血圧上昇に関わる。*7*8
α2C受容体(α2C adrenergic receptor) †
α2受容体のひとつ。脳や腎臓、大動脈、静脈などに発現する。シナプス前抑制や交感神経抑制、ノルアドレナリン遊離抑制、鎮痛、インスリン分泌制御などに関与する。*9*10
刺激によって細胞内小胞から細胞表面へ輸送されるという機能を持つ。
鼻粘膜においてはα1A受容体と同様に血管平滑筋で強い発現が見られる。*11
*2北海道大学 アドレナリンα2A受容体サブタイプに対するα2作動薬の作用に関する研究 小林武志: https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/65650/2/Takeshi_Kobayashi_review.pdf
*3KAKEN — 研究課題をさがす | 下行性疼痛抑制系のイノシトールリン脂質代謝に対する麻酔薬の影響 (KAKENHI-PROJECT-10671421): https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10671421/
*4長崎大学原爆後障害医療研究所 細胞機能解析部門 分子医学研究分野 各論 心血管内分泌: http://www-sdc.med.nagasaki-u.ac.jp/genetech/genkenbunshi/pdf/H24.1.4.pdf
*5KAKEN — 研究課題をさがす | 自律神経系を介した新たな視神経再生のメカニズムの解明 (KAKENHI-PROJECT-17791263): https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17791263/
*6北海道大学 アドレナリンα2A受容体サブタイプに対するα2作動薬の作用に関する研究 小林武志: https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/65650/2/Takeshi_Kobayashi_review.pdf
*7デクスメデトミジンの神経保護効果 合谷木徹: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/33/3/33_392/_pdf/-char/ja
*8東北大学機関リポジトリTOUR カテコールアミン受容体: https://tohoku.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=21213&item_no=1&page_id=33&block_id=38
*9東北大学機関リポジトリTOUR カテコールアミン受容体: https://tohoku.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=21213&item_no=1&page_id=33&block_id=38
*10デクスメデトミジンの神経保護効果 合谷木徹: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/33/3/33_392/_pdf/-char/ja
*11ヒト下鼻甲介におけるαおよびβアドレナリン受容体の免疫組織学的局在 白崎英明 金泉悦子 氷見徹夫: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/120/1/120_70/_pdf
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