β-カロテン(β-carotene) †
ビタミンA(レチナール)の前駆体(プロビタミンA)となるカロテノイド。β-カロチンとも。
橙色の色素成分であり、ニンジンなどの色の元となる。高等植物の葉においては2番目に多いカロテノイド(25%程度)。*1*2
小腸上皮でβ-カロテンはビタミンA1であるレチナールに変換される。ビタミンAが不足すると、蓄えられているβ-カロテンがビタミンA1に変換される。通常は肝臓や脂肪組織に蓄えられるか、余分であれば排泄される。
β-カロテンの性質 †
β-カロテンは油脂に溶けやすい性質を持っているため、油で炒めたり、ゴマ和えにしたりという調理法によって効率良く摂取できる。
しかし、β-カロテンの消化吸収率は 1/3 と低く、さらに体内でβ-カロテンがビタミンA1に変換される効率は 1/2 であることから、β-カロテンからビタミンAを摂取する量は、サプリメントや動物性食品からビタミンAを摂取するのに比べて 1/6 とされている。*3
健康なオランダの成人を被験者とした場合、オランダの通常の食事として調理された混合野菜(ミックスベジタブル)に含まれるβ-カロテンの吸収率は、精製β-カロテンを油に溶かしたβ-カロテンサプリメントを摂取した場合と比べると 1/7 程度である。そこで、アメリカ/カナダの食事摂取基準に倣って 1/6 とする。*4
対して、ビタミンA1を直接摂取する場合は過剰摂取障害があるが、β-カロテンにはそのような障害はなく肝臓や脂肪組織に蓄積するため安全性は高い。
また、様々な研究から、β-カロテンには発がんを抑える効果があることが確認されている。
1990年頃までの多くの食物・栄養とがんに関する疫学的研究によって,緑黄色野菜の摂取が多いヒトほど口腔・咽頭,食道,胃,結腸・直腸,肝臓,肺などのがんやほかの疾病へのリスクが低下するという証拠が集積した.より詳細な解析により緑黄色野菜に豊富に含まれるβ-カロテンが作用物質として注目された.また血中のβ-カロテン濃度が高いほど,発がんのリスクが低下する関係が見られた*5
β-カロテンの化学的特性 †
β-カロテンは金属捕捉機能(最大で10個の金属原子を捕捉する能力)を持っていることが確認され、今後の化学利用(機能性金属クラスター触媒・材料の開発等)が期待されている。*6
β-カロテンを多く含む食材*7 †
ニンジンの主根やカボチャの実に含まれるカロテノイドとしてβ-カロテンが10~20%ほど含まれる。
*2植物におけるカロテノイドの生合成とバイオテクノロジー 三沢典彦: http://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9307/9307_tokushu_6.pdf
*3鈴峯女子短期大学 ビタミンの栄養: http://www.suzugamine.ac.jp/arinobu/gakusyuu/vitamin.pdf
*4厚生労働省 ビタミン: http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4i.pdf
*5カロテノイドとヒト 高市 真一 日本医科大学生物学教室: http://www.nms.ac.jp/jmanms/pdf/008040264.pdf
*6カロテンの優れた金属捕捉機能を発見 -β-カロテン分子が多数の金属原子を挟み込む-(村橋G、柳井Gら) | 分子科学研究所: https://www.ims.ac.jp/news/2015/04/14_3126.html
*7東京医科大学八王子医療センター えいよう.com β-カロテンのお話: http://hachioji.tokyo-med.ac.jp/eiyou/eiyou.php?gid=18
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