グルコース(glucose : Glc) †
ヘキソースに分類される単糖類のひとつ。グルコースは葡萄から初めて取り出されたことからブドウ糖とも呼ばれる。異性体にフルクトースがある。分子式は C6H12O6
天然にはD体(D-グルコース)として存在する。グルコースとだけ書いた場合はD-グルコースのことを指す場合が多い。構造によってα-D-グルコースとβ-D-グルコースの2種類に分けられる(立体異性体)。*1*2
食品に含まれるマルトースやスクロースなどの二糖類やデンプンは消化液に含まれる酵素によって分解されグルコースを生じる。
大部分は分子内ヘミアセタール形成によって六員環のピラノース型で存在する。水中では、下図中央の鎖状構造を取り、アルデヒド基(還元末端)が現れるため還元性を持つ。
多くの生体がグルコースを栄養素として利用する。主にデンプンから分解・吸収され、主に脳や骨格筋で消費される。特に脳では、通常はグルコースがエネルギー源となる(グルコースが欠乏するとケトン体が利用される)。グルコース1分子から、38分子のATPが生成される。*3
経口摂取したグルコースは、約15分後に脳に集まり始めることが知られている。腸管からのグルコースの吸収はナトリウム依存性グルコース輸送体やグルコーストランスポーターなどのトランスポーターによって行われる。*4
血液中にグルコースが入るルートは主に以下の3つである。大きく分けると食事由来のものと、体内で産生される2つ。*5*6
体内では、脂肪酸やコレステロール、アミノ酸、核酸、補酵素の生合成にグルコースを原料として利用する。*7
過剰なグルコースは、インスリンの働きによって活性化するグリコーゲンシンターゼによって肝臓や筋肉でグリコーゲンとして貯蔵される。余剰量が増えると、脂肪酸とグリセリンに変換され、脂肪細胞で中性脂肪として蓄積される。したがって、糖質の過剰摂取は脂肪の増加の原因となる。*8*9
多くの生物は解糖系(エムデン-マイヤーホフ経路)によりグルコースをピルビン酸へと代謝する。*10
*2国立大学法人 大阪教育大学 アミラーゼを題材とした酵素反応の実際 理科教育講座 川村三志夫: http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~cse/2010chukourikakawamura.pdf
*3関西大学 大阪医科大学 大阪薬科大学 医薬品の働きを知る 人の消化と消化薬の働き: http://www.kansai-u.ac.jp/mpes-3U/schedule/clp/2010%E3%83%86%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%83%88sample.pdf
*4グルコースを巡る諸問題 東北大学サイクロトロン・RIセンター核医学研究部 山口慶一郎: http://www.cyric.tohoku.ac.jp/publications/news/No.30/30-5.html
*5鳥取大学医学部 二宮治明 膵臓のランゲルハンス島: http://www.ninomiya.med.tottori-u.ac.jp/homepage/end5.html
*6糖尿病の基礎知識: http://polaris.hoshi.ac.jp/openresearch/kamata(pathophysiol).html
*7西東社 カラー図解 栄養学の基本がわかる事典 川島由起子(2013/4/4): https://amzn.to/2tzGwYt
*8(株)化学同人 京都大学大学院薬学研究科 くすりをつくる研究者の仕事 薬のネタ探しから私たちに届くまで 2017/3/30
*9信州大学医学部保健学科検査技術科学専攻 信州大学 解糖系: http://zen.shinshu-u.ac.jp/modules/0052002003/main/main.pdf
*10原始的な糖代謝系酵素の新規な構造:好酸好熱性古細菌由来ヘキソキナーゼと基質との複合体の立体構造を原子レベルで解明: http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/wakagi.html
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