サワー種(sourdough) †
主にライ麦パンの製造に用いられる、酸味をもたらすパン種。パネットーネやサンフランシスコサワーブレッドなどにも用いられる。ライ麦粉、小麦粉、水などを用いて6日間かけて自然発酵させる製法が伝統的。サワードウとも。*1*2*3
古来から利用されたパン種である、発酵させたパン生地の一部を残したものはサワー種となる。
パン種には古代からさまざまなものがあったが、なかでもよく知られているのが、発酵させたパン生地を一部、焼かずに残しておくもの。そのため残し種とも老麵とも言われる。現代でもライ麦のパンやフランスパンなどの一部には使われており、酸味があることからサワー種とも言う。一度発酵した生地には、イースト菌が高密度で住んでいるのだから、次のパン生地づくりには、それをもとにすれば、発酵を一から始めるよりずっと確実で早い。こうした発想から種を残すことが始まったのだろう。けれどそのパン種はすっぱくなる。*4
ライ麦に付着した酵母菌から起こしたものはライサワー種とも呼ばれる。ライサワー種はライ麦パンを作る際に生地を酸性化しゲル化するのに必要不可欠な原料とされる。*5
パン酵母に比べ、複数の酵母菌や乳酸菌などの菌類を含み、それらが産生する乳酸菌などによってパンはやや酸味をおびた複合的な風味となる。生地を酸性にし、グルテンの少ない生地のべとつきをなくす作用がある。
ライ麦サワー種:穀物などに付着した酵母や乳酸菌、ライ麦粉、水で培養したパン種です。強い酸味が特徴で、ドイツパンなどによく使用されます。*6
デキストランを多く含むサワー種はそれを含まないサワー種に比べ、パンの軟らかさが増し、老化も抑制され、食べたときの官能評価を高めることができると報告されている。*7
含まれる乳酸菌としてはラクトバチルス・サンフランシセンシス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ペントーサス、ロイコノストック・メセンテロイデスが知られ、酵母としてはサッカロマイセス・セレビシエ、サッカロマイセス・エクスギュース、カンジダ・フミリスなどが報告されている。*8
サワー種の種類 †
サワー種製法の一例 †
原料としてライ麦粉、小麦粉、水、麦芽を混ぜ、28℃の条件下で24時間置く。その後、約5日間にわたり毎日種継ぎ(小麦粉と水を加える)を行うことで作成される。 この製法は乳酸菌スターターやパン酵母など使用せずに自然に発酵させて作られるが、発酵終了時には多くの乳酸菌や酵母が検出される。 発酵2日目までは乳酸菌以外の菌が繁殖するが、それ移行は乳酸菌が産生する乳酸によって種が酸性となり、酵母が急激に増加する。
*2岐阜市立女子短期大学研究紀要 スイス(ルツェルン)における小麦粉発酵食品 堀光代 長野宏子: http://www.gifu-cwc.ac.jp/tosyo/kiyo/58/zenbun58/switzerland_hori.pdf
*3酸菌と発酵 Kin's Vol.6: https://rd.asahigroup-holdings.com/research/enjoy/kins/pdf/vol6.pdf
*4講談社学術文庫 パンの文化史 舟田詠子: https://amzn.to/33kvbg9
*5伝統的パン種のおいしさと微生物の関わりについて(<特集>伝統発酵食品研究の新展開〜微生物共生から探る〜) - 国立国会図書館デジタルコレクション: https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10518022
*6世界のパン 東京聖栄大学 応用微生物学研究室 泉川千波 坂本梨紗 篠崎みよし 島方潮 古屋智明: https://www.tsc-05.ac.jp/images/nutrition_ed/2018fsp/02.pdf
*7サワー種(発酵種)添加がパンの物理的特性、嗜好性、および食べやすさにおよぼす影響 健康生命科学研究所 高橋智子: http://www.kanagawa-it.ac.jp/~l4024/research/pdf/doc_07_01_2018.pdf
*8伝統的パン種のおいしさと微生物の関わりについて(<特集>伝統発酵食品研究の新展開〜微生物共生から探る〜) - 国立国会図書館デジタルコレクション: https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10518022
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