パントテン酸(pantothenic acid) †
ビタミンBのひとつ。ビタミンB5とも呼ばれる。補酵素として、糖や脂質(脂肪酸)の代謝に関わる。例えば、ピルビン酸からのアセチルCoAの合成や脂肪酸からのアシルCoAの合成など。
パントテンは「いたるところに存在する」という意味であり、その意味の通り、通常の食生活で不足することは稀とされる。*1*2
パントテン酸自体は黄色の油状物質。食品添加物として使用されるカルシウムとの塩(パントテン酸カルシウム)は無色。
パントテン酸の生理機能は,CoA や ACP の補欠分子族である4'-ホスホパンテテインの構成成分として,脂質の代謝を中心に機能することであり,糖および脂質の代謝とのかかわりが深い.生体内代謝での CoA や ACP の役割は,酸化還元反応,転移反応,加水分解反応,分解反応,異性化反応,合成反応など,ほとんどすべてのタイプの反応に関与し,140 種類以上の酵素の補酵素として機能している.*3
化学的にはパント酸とβ-アラニンが酸アミド結合したもの。体内で4'-ホスホパンテテインを経てコエンザイムA(CoA)に生合成される。
HDLの生成を促す働きを持つ。
パントテン酸の食事摂取推奨量*4 †
年齢(歳) | 性別ごとの推奨量(mg/日) | |
---|---|---|
男性 | 女性 | |
1~2 | 3 | 3 |
3~5 | 4 | 4 |
6~7 | 5 | 5 |
8~9 | 5 | 5 |
10~11 | 6 | 6 |
12~14 | 7 | 6 |
15~17 | 7 | 5 |
18~29 | 5 | 4 |
30~49 | 5 | 4 |
50~69 | 5 | 5 |
70~ | 5 | 5 |
パントテン酸の欠乏症 †
パントテン酸は様々な食品に含まれるため不足することはあまりないが、起きた場合はコエンザイムAの減少による代謝異常が予想される。
パントテン酸は、補酵素であるコエンザイムA及びアシルキャリアータンパク質の構成成分であり、糖及び脂肪酸の代謝における酵素反応に広く関与している。欠乏により、皮膚炎、副腎障害、末梢神経障害、抗体産生障害、成長阻害等が起こることが知られている。*5
ヒトにおいてはパントテン酸の欠乏症はほとんど存在していないが,ラットなどで実験的に引き起こされたパントテン酸欠乏症では,成長停止,体重減少,突然死,皮膚・毛髪・羽毛の障害,副腎障害,末梢神経障害,抗体産生の障害,生殖機能障害などが見られる.*6
足の裏が焼けるような感覚(灼熱脚症候群)が、ビタミンB1、ビタミンB2、ニコチン酸の投与では改善されず、パントテン酸の投与のみで改善されたことから、これがヒトにおけるパントテン酸欠乏の特徴的な症状である可能性が示唆されている。*7
過剰摂取による症状・障害はない。
*2西東社 カラー図解 栄養学の基本がわかる事典 川島由起子(2013/4/4): https://amzn.to/2tzGwYt
*3日本人の食事摂取基準を改定するためのエビデンスの構築に関する研究 微量栄養素と多量栄養素摂取量のバランスの解明 主任研究者 柴田 克己 滋賀県立大学 教授: http://www.shc.usp.ac.jp/shibata/H20-II-09.pdf
*4日本人の食事摂取基準(2015年版)スライド集: http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000056112.html
*5文部科学省 食品成分データベース ビタミン: https://fooddb.mext.go.jp/nutman/nutman_05.html
*6日本人の食事摂取基準を改定するためのエビデンスの構築に関する研究 微量栄養素と多量栄養素摂取量のバランスの解明 主任研究者 柴田 克己 滋賀県立大学 教授
*7日本人の食事摂取基準を改定するためのエビデンスの構築に関する研究 微量栄養素と多量栄養素摂取量のバランスの解明 主任研究者 柴田 克己 滋賀県立大学 教授
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