ビタミンC(vitamin C) †
ビタミンの一つ。水に溶けやすい水溶性ビタミン。L-アスコルビン酸とも呼ばれる。アスコルビンは、ギリシャ語で「壊血病なし」という意味。分子式は C6H8O6
熱やアルカリ、酸化によって分解される。また、銅や鉄などの金属によって酸化されやすい。*1
ビタミンC自身は酸化されやすい物質で、他の物質が酸化されることを防ぐ抗酸化作用を持つため、酸化防止剤として食品に使われる。
体内におけるビタミンCの働き †
体内ではミネラル(鉄や銅)の還元の他、SODを還元するなど多くの酸化還元反応に関与している。
ビタミンC自身が酸化されることで、多くの金属イオンを還元型の状態に維持するはたらきを持ちます。ビタミンC自体は補酵素ではありませんが、酵素の補因子である必須イオンを還元状態に保つことで、さまざまな酵素のはたらきを助けています。*2
ビタミンCの働きは、結合組織や歯茎の維持、骨の形成、創傷治癒におけるコラーゲン合成、ビタミンB類の活性化、コレステロールからの胆汁酸の産生、T細胞の増殖促進およびアポトーシスの抑制など。アミノ酸(トリプトファン)からの神経伝達物質(ノルアドレナリン、セロトニン)の合成にも必要な物質である。*3*4
コラーゲンのポリペプチド鎖にあるプロリンやリシンをヒドロキシ化することで、その合成を促進する。*5
活性酸素の除去にも関わる。活性酸素に電子を1つ渡すと自らはラジカルとなるが、共鳴により安定化・不均化してデヒドロアスコルビン酸となる。*6
チロシンからのメラニンの生成過程で、L-ドーパからL-ドーパキノンへの酸化過程を阻害してメラニン色素の生成を抑制する。*7
摂取したビタミンCは小腸の上皮細胞から吸収され、2〜4時間で尿中に排出される。この吸収にはトランスポーター(SVCT1)が関わる。*8*9
ヒト以外の哺乳類にはビタミンCを体内で合成できる種も存在するが、ヒトはビタミンC合成に必要な酵素であるL-グロノ-γ-ラクトン酸化酵素に遺伝子変異があるため、体内でビタミンCを合成できない。*10
ビタミンCの食事摂取基準*11 †
年齢(歳) | 推奨量(mg/日) |
---|---|
1〜2 | 35 |
3〜5 | 40 |
6〜7 | 55 |
8〜9 | 60 |
10〜11 | 75 |
12〜14 | 95 |
15〜17 | 100 |
18〜29 | 100 |
30〜49 | 100 |
50〜69 | 100 |
70〜 | 100 |
水溶性ビタミンであるため、多量に摂取しても尿として排泄され健康上の問題はない。
ビタミンCが不足すると、出血傾向や壊血病(スコルビー)などが起こる。多く摂取しても明確に風邪を予防する効果が高まるわけではないが、症状や期間を和らげる可能性はあるとされる。
ビタミンCを多く含む食品*12 †
ビタミンCは動物性食品には少なく、主に果物や野菜に含まれる。
食品名 | 100gあたりの含有量(mg) |
---|---|
アセロラ | 800〜1700 |
青汁(ケール) | 1100 |
パセリ(乾燥) | 820 |
グァバ | 220 |
海苔 | 160〜210 |
赤ピーマン | 170〜180 |
黄ピーマン | 150〜160 |
キウイフルーツ(黄肉) | 140 |
生姜おろし | 120 |
ブロッコリー | 120 |
レモン | 100 |
青ピーマン | 76〜79 |
柿 | 69 |
キウイフルーツ(緑肉) | 69 |
イチゴ | 62 |
オレンジ | 60 |
タグ: ビタミン 栄養 有機化合物 抗酸化作用 コラーゲン 活性酸素
*2秀和システム 生化学若い研究者の会 これだけ!生化学
*3Vitamin C in Disease Prevention and Cure: An Overview: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3783921/
*4岐阜市立女子短期大学研究紀要第 アポトーシスに関する研究(7)栄養状態とアポト-シス応答は関係がある: http://www.gifu-cwc.ac.jp/tosyo/kiyo/56/zenbun56/apoptosis_doke.pdf
*5西東社 カラー図解 栄養学の基本がわかる事典 川島由起子(2013/4/4): https://amzn.to/2tzGwYt
*6活性酸素と抗酸化物質の化学 中村成夫 日本医科大学基礎科学化学: http://www2.nms.ac.jp/jmanms/pdf/009030164.pdf
*7ハイシー顆粒25%: https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3140002D1037_2_01/
*8消化管吸収とトランスポーター 立命館大学情報理工学部 生命情報学科 藤田卓也: http://www.phs.osaka-u.ac.jp/homepage/yaku/sotugo/pdf/h19_04_0.pdf
*9アスコルビン酸,エリソルビン酸単独摂取後の尿中排泄経過 藤井俊子 緒方正名: http://www.kawasaki-m.ac.jp/soc/mw/journal/jp/1994-j04-1/04_1_1148.pdf
*10東邦大学 理学研究科 生物分子科学専攻 分子医学部門 永田研究室 ネクローシス細胞による炎症応答に対する老化の影響: http://rep.toho-u.ac.jp/modules/xoonips/download.php/183.pdf?file_id=107
*11日本人の食事摂取基準(2015年版)スライド集: http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000056112.html
*12文部科学省 食品データベース 食品成分ランキング: https://fooddb.mext.go.jp/ranking/ranking.html
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