フェロモン(pheromone) †
同種の他の個体に作用して行動反応や内分泌反応を引き起させるために分泌される物質。
仲間への危険伝達や攻撃行動、ストレスの制御、生殖行動などに関わるとされる。*1
例えば、オスのマウスが尿に応答するフェロモンを受容すると、その情報が本能行動の制御に重要である視床下部の特定の神経回路を活性化することでオス間の攻撃行動が促進されることが報告されている。*2
マウスを含む多くの生物において、フェロモンは鼻腔下部に位置する鋤鼻器に発現するフェロモン受容体で受容される。フェロモン受容体は多重遺伝子ファミリーを形成しており、数百種類の受容体がそれぞれ異なるフェロモンを特異的に受容するとされる。
「ある個体から分泌され、同種の他個体に受容されると、受容した個体に特定の行動や内分泌変化を引き起こす物質」と定義される。特に異性から発せられ、性特異的な行動や内分泌変化を引き起こすものを「性フェロモン」と呼ぶ。*3
フェロモンとなる物質には様々な種類があるが、例えば、イモリの求愛行動に関わるフェロモンは、10個のアミノ酸残基からなるペプチド(ペプチド性フェロモン)であることが確認されている。
動物の求愛行動の発現や生殖機能あるいは社会行動は神経内分泌的な制御を受けるが、一方でフェロモン情報伝達系を介した異性や同性との個体間情報伝達機構の存在が昆虫のみならず我々高等動物においても見出されつつある。
数種の両生類よりフェロモン活性を有する様々なタンパク質あるいはペプチドが見出されている。
我々人間のフェロモン情報伝達系は鋤鼻器官や鋤鼻神経系の特徴より退化的であると考えられてきたが、最近、嗅覚系を介する新たなフェロモン情報伝達経路の存在が見出されつつある。*4
*1フェロモン研究詳細 哺乳類におけるケミカルコミュニケーションに関する研究: http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/koudou/j-pheromone.html
*2オスマウスのフェロモンがオス間の争いを引き起こす神経メカニズムを解明 | 東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部: https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20220530-2.html
*3オスらしさを高めるフェロモンをマウスで発見 — フェロモンに新しい概念 —: http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2016/20160418-1.html
*4生理活性ペプチドの多様性と普遍性 富山大学大学院理工学研究部 教授 松田恒平: http://www.sugitani.u-toyama.ac.jp/sangaku/forum/souyaku27/1.matsuda.pdf
*2オスマウスのフェロモンがオス間の争いを引き起こす神経メカニズムを解明 | 東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部: https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20220530-2.html
*3オスらしさを高めるフェロモンをマウスで発見 — フェロモンに新しい概念 —: http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2016/20160418-1.html
*4生理活性ペプチドの多様性と普遍性 富山大学大学院理工学研究部 教授 松田恒平: http://www.sugitani.u-toyama.ac.jp/sangaku/forum/souyaku27/1.matsuda.pdf
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このページの最終更新日時: 2022-06-04 (土) 21:21:33