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プラスマローゲン(plasmalogen)

グリセロリン脂質のひとつ。sn-1位ビニルエーテル結合sn-2位多価不飽和脂肪酸を有するエーテル型グリセロ脂質。最も酸化を受けやすいリン脂質とされる。プラズマローゲンとも。*1*2

プラスマローゲンの基本構造

ヒトのリン脂質全体の18%を占める。組織によって分布が異なり、網膜心臓骨格筋白血球精子などに多く存在する。プラスマローゲンは体内でペルオキシソーム膜タンパク質であるFAR1触媒されて開始され、全7段階の反応を経て小胞体で完了する。*3

天然には、Xの部分の構造が異なる以下の2種類が存在する。

食品中のアルキル型リン脂質小腸から吸収され、一部は肝臓でプラスマローゲンに変換される。*4

以下のような疾患によってプラスマローゲンの欠損や減少が起こる。*5

神経細胞の新生や機能の増強に必要であり、さらにアミロイドβの蓄積を抑制する。認知症患者の海馬前頭葉血清においてプラズマローゲンが減少していることが報告されている。結合している不飽和脂肪酸の種類によって、人体に及ぼす作用が異なるとされる。*6

n-3系脂肪酸の貯蔵に関わる。また、細胞酸化ストレスから保護する役割を持つことが示唆されている。ビニルエーテル結合によるラジカル消去作用によるものと考えられている。*7

ヒト細胞酸化ストレスを与えると,プラスマローゲン前駆体を添加していない培地では活性酸素種ROS)が上昇して細胞が死んでいってしまうのに対し,プラスマローゲン前駆体を添加した培地で培養した場合にはROSは増えず,細胞の生存率が高い事から,プラスマローゲンが酸化ストレスから細胞を守っているのではないかと考えられる.*8

*1皮膚神経疾患シェーグレン・ラルソン症候群原因遺伝子Aldh3a2のノックアウトマウスを用いた皮膚病態解析: https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/64635/1/Tatsuro_Naganuma.pdf
*2KAKEN — 研究課題をさがす | プラズマローゲンの網羅的解析と免疫測定法の開発 (KAKENHI-PROJECT-25460669): https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-25460669/25460669seika.pdf
*3FAR1 fatty acyl-CoA reductase 1 [Homo sapiens (human)] - Gene - NCBI: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/84188
*4腸管におけるアルキル型リン脂質の吸収とプラスマローゲンへの変換に関する研究 応用生物科学専攻 食資源科学講座 食品健康科学 長谷川大将: https://www.agr.hokudai.ac.jp/gs/master/2016/16020201.pdf
*5九州大学 オルガネラホメオスタシス研究室 プラスマローゲンの生合成: http://www.organelle.kyushu-u.ac.jp/lab/organellestasis/study2F.html
*6ブックマン社 藤野武彦 馬渡志郎 片渕俊彦 認知症はもう不治の病ではない! 脳内プラズマローゲンが神経細胞を申請する(2015/10/10)
*7オレオサイエンス 未知なるリン脂質プラスマローゲン 前場良太
*8新規ペルオキシソームタンパク質の同定とその機能解析 生物・医学研究系 ゲノム医学 水野由美: http://www.saitama-med.ac.jp/jsms/vol37/02/jsms37_t021_t030.pdf

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このページの最終更新日時: 2019-05-03 (金) 10:20:19