中性脂肪(neutral lipid) †
体内の血液中や内臓などに蓄えられる脂肪。「中性」は、脂肪酸がグリセリンと結びついた結果、中性となることに由来する。
化学的にはグリセリンが持つ1〜3つのヒドロキシ基に脂肪酸が結合したもの、すなわちアシルグリセロール(モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロール)のことを指すが、生体内の中性脂肪はほとんどがトリアシルグリセロールであるため、トリアシルグリセロールと同じ意味で使われることが多い。*1*2
トリアシルグリセロール(TAG)は中性脂肪の主成分であり、その役割としては脂肪組織におけるエネルギー貯蔵分子としての役割が代表的である。… その他の中性脂肪であるモノアシルグリセロール(MAG)、ジアシルグリセロール(DAG)は、TAGから脂肪酸の一部が失われたものであり、主にTAG合成の前駆体として機能する。それ以外にも、例えばジアシルグリセロールについてはタンパク質リン酸化酵素(キナーゼ)と直接相互作用してその活性調節に関与するなど、シグナル伝達分子としての生理的役割も担っている。*3
トリアシルグリセロールは脂肪細胞特異的トリグリセリドリパーゼ(ATGL)、ジアシルグリセロールはホルモン感受性リパーゼ(HSL)、モノアシルグリセロールはモノグリセリドリパーゼ(MGL)に触媒されることによって加水分解される。*4
食事に含まれる脂肪が分解されて腸で吸収されると、腸粘膜皮上で再度中性脂肪に合成され、カイロミクロンとして血液中に分泌される。*5
食事によって摂取する脂肪のほとんどが中性脂肪であり、エネルギーとして使用されなかった分は内臓脂肪や皮下脂肪として体に蓄えられる。
中性脂肪の基準値 †
30~149mg/dL が正常範囲。
中性脂肪の値が基準値以上に高くなると、動脈硬化が起こり、血管系の疾患(高血圧や糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞など)が発症しやすくなる。
中性脂肪に関わる疾患*6 †
*2脂肪の代謝とその調節 からだのエネルギーバランス 大学院生命理学研究科 教授 大隅隆: http://www.sci.u-hyogo.ac.jp/life/molbio/KOKAI.pdf
*3トリアシルグリセロール合成に関与するアシル基転移酵素の研究 大阪市立大学大学院 工学研究科 平峯靖: https://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/contents/osakacu/kiyo/111TD0000243.pdf
*44週間の高脂肪食摂取が、ラットの脂肪組織の脂肪分解関連酵素発現量に及ぼす影響: https://www.waseda.jp/tokorozawa/kg/doc/20_ronbun/2014/1K11C388.pdf
*5信州大学 医学部 保険学科 脂質の構造
*6中性脂肪|血中脂質の検査|【よくわかる-健診・人間ドックガイド】: https://kenkousupport.kyoukaikenpo.or.jp/topics/kenshin/guide/index/02/04.html
ご意見・ご要望をお聞かせください。
この用語を編集/画像添付