胆汁酸(bile acid) †
胆汁に含まれる成分。肝臓でコレステロールから作られ、胆嚢に蓄えられる。
ヒトの場合、胆汁酸の成分は約80%がコール酸、15%がデオキシコール酸、2%がケノデオキシコール酸、微量のリトコール酸であるとされる。ウルソデオキシコール酸も含まれる。このうち、デオキシコール酸とリトコール酸、ウルソデオキシコール酸は二次胆汁酸である。*1*2
以下は胆汁酸に共通する化学構造。R1およびR2は胆汁酸の種類によって異なる。
胆汁酸の役割 †
食事によって腸(十二指腸)に分泌され、水に溶けにくい脂質などを溶けやすい形(胆汁酸塩)として吸収されやすいようにする。タンパク質を溶解させる作用も持つ。
脂質の吸収を補助する以外には、腸内細菌の過剰繁殖抑制や結腸運動の促進、便から過剰に水分を吸収するのを防ぐなどの働きがある。
肝臓でのみコレステロールは胆汁酸へと異化される。胆汁酸は、胆汁成分として小腸上部から小腸管腔へと分泌され、食事由来の脂肪分とミセルを形成し、脂溶性成分の吸収を促進する働きをする。小腸下部の回腸に至るとそこに局在する胆汁酸トランスポーター(IBAT)の働きにより、95%程度の効率で再吸収され、肝臓へと戻る。この胆汁酸の一連の流れを腸肝循環と呼ぶ。*3
回腸からの吸収を逃れた胆汁酸は大腸を通過するが、その一部は大腸からも吸収されて腸肝循環系に入る。最終的には小腸内に入った胆汁酸の95~98%は再吸収され、便として排泄される胆汁酸は1日約500mgとされる。*4
胆汁酸の産生機構やトランスポーターが脳に存在することが確認されている。
脳内で活性は弱いもののこの胆汁酸を生合成する酵素系が存在すること、また脳内のある特定の組織に胆汁酸に特異的なトランスポーターが存在していることもわかってきました。*5
ヒトの便中に見られる主な胆汁酸 †
*2代謝活性中間体と蛋白質付加体生成: https://www.jstage.jst.go.jp/article/massspec/50/3/50_3_162/_pdf
*3研究成果「胆汁酸の新たな生理機能-小腸における機能を支える3種類のタンパク質-」 | 東京大学: http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_171226_j.html
*4脂質エンサイクロペディックデータベース(LEDB) 胆汁酸の化学構造と分布: http://www.med.teikyo-u.ac.jp/~lipo/lecture/ba/ba.html
*5特集/古くて新しい胆汁酸研究 後藤順一: http://www.bureau.tohoku.ac.jp/manabi/manabi34/mm34-45.html
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