血管平滑筋(vascular smooth muscle) †
血管の断面の円周方向に配列し、自律的に収縮・弛緩することによって血管径を制御する平滑筋。毛細血管には平滑筋がない。
ノルアドレナリンが平滑筋のα受容体を刺激すると、カルシウムイオンチャネルが開き、細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇して血管が収縮する。*1
交感神経性血管収縮神経の末端から放出されたノルアドレナリンは、αアドレナリン受容体に作用し、細胞質カルシウム濃度を上昇させ、Ca2+感受性を亢進させて、血管平滑筋を収縮させる。副交感神経性血管拡張神経から放出されたアセチルコリンは内皮細胞のムスカリン受容体に作用し、内皮細胞から血管物質(主にNO)を産生させ、血管を拡張させる。*2
血管平滑筋の収縮と弛緩*3 †
ミオシン軽鎖のリン酸化を介した血管平滑筋の収縮は以下のように起こる。
- アンジオテンシンⅡなどの刺激に応答して、細胞内のGタンパク質に共役したホスホリパーゼC(PLC)の作用により、イノシトール三リン酸(IP3)が生成される。
- IP3は細胞内のカルシウムイオン貯蔵部位(筋小胞体)上のカルシウムイオンチャネルを開口することによりカルシウムイオン放出を惹起し、細胞内のカルシウムイオン濃度を上昇させる。細胞膜にもカルシウムイオンチャネルが存在し、様々な刺激に応答してチャネルが開口し、細胞外からのカルシウムイオン流入が引き起こされる。
- 筋小胞体からの放出、および細胞外からの流入により上昇した細胞内カルシウムイオンは、カルモジュリンと結合してCa2+/カルモジュリン複合体を形成し、MLCKの触媒サブユニットに結合してMLCKを不活性型から活性型に変換する。
- 活性型MLCKがMLCをリン酸化すると、ミオシン頭部に存在するMg2+-ATPaseのアクチンによる活性化が引き起こされ、血管平滑筋は収縮する。
- その後、細胞内カルシウムイオン濃度が低下すると、カルシウムイオンはカルモジュリンから解離してMLCKは不活性化される。その結果、MLCPhが優位になり、MLCは脱リン酸化されて血管平滑筋は弛緩する。
これに対し、Rhoキナーゼはカルシウムイオン濃度非依存的に血管平滑筋の収縮・弛緩を制御できる。
活性化されたRhoキナーゼは、MLCPhのミオシン結合サブユニットをリン酸化することによりその活性を阻害し、その結果MLCK/MLCPh活性のバランスが崩れ、MLCのリン酸化が上昇することで血管平滑筋が収縮する。
*1東邦大学 薬学部薬物学教室 田中光 行方衣由紀 濵口正悟 心筋-バーチャルラボラトリ 循環系と血圧 血管平滑筋: http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/shinkin/circulatory/circl-2-1.html
*2九州大学 大学院医学研究院 附属心臓血管研究施設 分子細胞情報学部門 血管平滑筋の収縮:実習の背景: http://www.molcar.med.kyushu-u.ac.jp/lecture%20notes/LabPractice_background.pdf
*3日薬理誌 次世代治療 Rho キナーゼ阻害薬 肺動脈性肺高血圧症におけるRho キナーゼ経路の役割 福本義弘: https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/143/4/143_178/_pdf
*2九州大学 大学院医学研究院 附属心臓血管研究施設 分子細胞情報学部門 血管平滑筋の収縮:実習の背景: http://www.molcar.med.kyushu-u.ac.jp/lecture%20notes/LabPractice_background.pdf
*3日薬理誌 次世代治療 Rho キナーゼ阻害薬 肺動脈性肺高血圧症におけるRho キナーゼ経路の役割 福本義弘: https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/143/4/143_178/_pdf
ご意見・ご要望をお聞かせください。
血管平滑筋に関する情報を検索
この用語を編集/画像添付
このページの最終更新日時: 2019-05-22 (水) 05:33:30