GluK1 †
GluK1とは、中枢神経系において興長性神経伝達を担うカイニン酸型グルタミン酸受容体を構成するサブユニットの一つである遺伝子およびそのタンパク質産物である。*1
グルタミン酸受容体は哺乳類の脳における主要な興奮性神経伝達物質であるL-グルタミン酸に応答する膜受容体であり、イオンチャネル型受容体と代謝調節型グルタミン酸受容体に大別される。イオンチャネル型受容体はその薬理学的特性からAMPA受容体、NMDA受容体、カイニン酸受容体の3つのファミリーに分類される。GluK1は、カイニン酸受容体を形成するサブユニットであるGluK1からGluK5のうちの一つであり、以前はGluR5という名称で命名されていた。遺伝子レベルではヒトにおいてGRIK1遺伝子として第21染色体にコードされている。*2
GluK1サブユニットは単独あるいは他のカイニン酸受容体サブユニットとヘテロ多量体を形成し、細胞膜上で陽イオン透過性チャネルとして機能する。L-グルタミン酸が結合するとチャネルが開き、ナトリウムイオンやカリウムイオンが細胞膜を通過して細胞内へ流入あるいは細胞外へ流出し、膜電位の脱分極を引き起こすことで神経伝達に関与する。また、一部のRNA編集やスプライシングバリアントによって生じる多様性が知られており、これによりイオン透過性やキネティクスなどの電気生理学的特性が変化する。*3
中枢神経系におけるGluK1の発現は、海馬、視床、扁桃体、脊髄などの脳領域において認められる。シナプス前抑制およびシナプス後興奮の両方において重要な役割を果たしており、痛覚情報の伝達、てんかん性の発作の制御、および神経回路網の可塑性に関与していることが示唆されている。特に疼痛の受容や伝導経路における関与が注目されており、創薬の標的としての研究が進められている。*4
薬理学的には、GluK1はカイニン酸やドモ酸などのアゴニストによって活性化される。さらに、GluK1を選択的に阻害あるいは拮抗する化合物の開発が進められており、難治性疼痛や片頭痛、てんかんなどの神経疾患に対する治療薬としての臨床試験が行われてきた歴史がある。しかしながら、他のグルタミン酸受容体ファミリーとの交差反応性や副作用の観点から、高度に選択的なアンタゴニストの開発は依然として重要な研究課題となっている。*5
*2Genetards / NCBI Gene: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/2892
*3National Center for Biotechnology Information: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/2892
*4UniProt: https://www.uniprot.org/uniprotkb/P39086/entry
*5National Center for Biotechnology Information: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/2892
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