健康用語WEB事典

ウイルス(virus)

核酸DNAまたはRNA)をタンパク質の殻で囲んだ物体。ウィルスとも表記される。

細胞を持たず、自らは代謝や繁殖も行わない。また無機化合物のように結晶を作るため、生物と無生物の間の存在と言われる。ゲノムとする核酸(コア)の種類によってDNAウイルスRNAウイルスに大別される。*1

ウイルスの大きさは、ほとんどのものが20~30nmで、大きいものでも数百nmであり、細胞に比べてはるかに小さい。

他の生物細胞に自分の核酸を送り込んで増殖する。ウイルス感染を受けた細胞は死滅するが、ウイルスは生きた細胞中でしか生きられないため、他の細胞に移動して感染を拡大させる。*2*3

条件さえ整えば1つの細胞内で数十から数百のウイルスを複製することができる。本的には感染細胞生理的・形態的変化(CPE: cytopathic effect)を起こして死滅することが多いので、ウイルス細胞が死ぬ前に他の細胞感染することを繰り返して増殖する。*4

ウイルス感染成立には、侵入した細胞内で核酸を放出する必要がある。ウイルス細胞に侵入するためには、その細胞ウイルスが結合できる受容体が必要になる。

ウイルス感染受容体が存在しない細胞には感染することが出来ないため、どのような細胞ウイルス感染受容体発現しているかが、ウイルスによって引き起こされる病気(病変)の第一の決定因子となる。*5

ウイルスの構造*6

部位の名称詳細
コア核酸DNA または RNA
カプシドタンパク質の殻
エンベロープ脂質タンパク質などを含む膜

ウイルスを包む膜であるエンベロープを持つものと持たないものが存在する。感染する能力を持つ完成したウイルスビリオンと呼ぶ。*7

疾患を引き起こすウイルス

ウイルスは様々な感染症を引き起こす原因となる。ウイルス感染する部位は、呼吸器または消化管ウイルスの種類によって感染対象の細胞が異なる。

体内にはDNAウイルスRNAウイルスのそれぞれを検知するDNAセンサーとRNAセンサーがあり、厳密に役割が分けられているが、マイナス一本鎖RNAウイルスである麻疹ウイルス感染した細胞内では、RNAウイルスに対するセンサーに加えてDNAウイルスに対するセンサーも活性化し、重層的に自然免疫が誘導されることが報告されている。*8

神経細胞

呼吸器

皮膚粘膜

肝臓

リンパ球

複数の細胞を対象

インフルエンザウイルスC型肝炎ウイルスAIDSウイルスなどは頻繁に変異種が発生するため、予防や治療が難しい。*9

また、がんの15%程度はウイルスが原因とされる。ウイルス由来のタンパク質が、細胞の増殖やアポトーシスに関わるタンパク質変異させることが原因となる。*10

実際に、子宮頚がんヒトパピローマウイルスHPV)の感染がなければ発生しない。

タグ: ウイルス 病原体 感染症

*1大阪大学 伊川正人 微生物病研究所 -病気のバイオサイエンス-: http://www.biken.osaka-u.ac.jp/biken/BioScience/page23/index_23.html
*2NHK高校講座 | ライブラリー | 生物基礎 細胞に見られる共通点と多様性: http://www.nhk.or.jp/kokokoza/library/tv/seibutsukiso/index.html
*3近畿大学医学部免疫学教室 免疫学実習 酵素抗体法によるウイルス感染細胞の検出と感染性ウイルス粒子の定量: https://joyplot-com.ssl-netowl.jp/health.joyplot.com/HealthWordsWiki/?cmd=edit&page=%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9
*4大阪大学 伊川正人 微生物病研究所 -病気のバイオサイエンス-
*5トピックス | ウイルス感染プロジェクト: http://www.igakuken.or.jp/neurovirology/topics/topics4.html
*6感染症学第1回 プリオン: http://www.setsunan.ac.jp/~p-bisei/Lecture_files/NID13-08.pdf
*7ウイルスの構造上の特徴と消毒剤感受性について: http://www.yakuhan.co.jp/di/qa/pdf/Q65.pdf
*8【記者発表】RNAウイルスの増殖を抑え込む、2段階目の防御戦略を発見~DNAウイルスへの反応経路を利用~ - 東京大学生産技術研究所: https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/news/3637/
*9熊本保健科学大学保健科学部 野崎周英 ワクチンの現状と課題: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpstj/76/1/76_4/_pdf
*10技術評論社 桂義元 免疫はがんに何をしているのか? 見えてきた免疫のメカニズム 2016/12/25

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このページの最終更新日時: 2021-10-16 (土) 14:45:25