エナンチオマー(enantiomer) †
立体異性体のひとつ。互いに鏡写しの関係にあり重ね合せることができない一対の分子の一方のこと。鏡像異性体や光学異性体とも呼ばれる。*1
元素構成が同じで元素結合の組み合わせも同じだが、その空間的な配置が異なる。
実像とそれ自身の鏡像とが重ね合わせられない化学構造のことを「キラルである」または「キラリティーを持つ」と言う。
L体とD体(R体とS体、(+)と(-)とも呼ばれる)は互いにエナンチオマーであり、例えばグルコースにはL-グルコース?とD-グルコースが存在する。L体とD体の混合物はラセミ体と呼ばれる。酵素反応は単一のエナンチオマーしか作らない。
化合物の元素の立体配置を示すR/Sと光学活性を示す(+)/(-)は必ずしも一致しない。詳細は下記を参照。
エナンチオマーの命名*2 †
命名法には以下の3種類がある。
光学活性による命名法(+/- または d/l) †
物質を含む溶液に偏光を当てると偏光の軸が回転することを利用した命名法。偏光軸を右(時計回り)に回転させる薬物を右旋性と呼び (+) あるいは dextro(略して d)、左(反時計回り)に回転させる薬物を左旋性と呼び (-) あるいは laevo(略してl)と表記する。
しかし、偏光軸の回転方向は、その物質を溶かす溶媒の種類によって変化するため、以下のより正確な命名法が考案された。また、ラセミ体は偏光軸の回転を起こさない。
フィッシャー命名法(D/L) †
標準物質を使う命名法。例えば、糖類にはd-グリセルアルデヒド、アミノ酸にはl-セリンをそれぞれ標準物質として使い、偏光軸の回転方向が標準物質と同じ薬物をD、逆の薬物をLとする。糖類やアミノ酸の分野で使われるが、上記の光学活性に使われる d/l とこれに使われる D/L が似ており混乱しやすい。
カーン・インゴルド・プレローグ順位則(R/S) †
偏光軸の回転とは無関係の、元素の立体配置による命名法。現在最も広く使われている。
キラル炭素に結合している4個の元素について、分子量が大きなものから小さなものへ順位を付け、分子量が最も小さな元素の反対側からキラル炭素を見たときの残りの3つの結合元素の分子量が大きいものから小さいものへ時計回りに並んでいればR(Rectus = right)配置、逆に反時計回りに並んでいるときにはS(Sinister=left)配置とする。
*2ロピバカインの薬理学的特徴 金沢大学附属病院麻酔科蘇生科 山本健: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/29/4/29_4_509/_article/-char/ja/
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