テロメア(telomere) †
真核生物の染色体(ゲノムDNA)の末端に存在する塩基の繰り返し配列のこと。ギリシャ語で「末端」を意味する。ヒトのテロメアは、TTAGGGという配列が1500~2500回繰り返される。
RNAプライマーを作る場所を提供するためのDNA配列とされる。
真核生物の染色体では、DNAの3'末端側で「ある問題」が起こります。それは、3'末端に近づくにつれ、ラギング鎖?の合成に必要なRNAプライマーをつくる場所がなくなり、複製ができなくなることです。そこで、真核生物ではあらかじめDNAの3'末端にテロメアというある一定の繰り返し配列を持つことで、この問題を回避しています。要するに、なくなっても大丈夫なDNA配列を余分においておくわけですね。*1
染色体の末端を保護する役割を持つ。また、テロメアの長さは細胞の寿命やがん化と密接な関係があることが確認されている。
この一見突飛にも見える研究から、二つの重要な事実が明らかにされた。一つは単純な繰返し配列が、線状の染色体の末端を安定に保護できると言うこと。そしてもう一つは、単純な繰返し配列によって末端を保護するという機構が、繊毛虫類とパン酵母という進化的にかけ離れた生物種間で共通に使われているという事実である。その後の多くの研究によって、植物や昆虫、そして私たちヒトに至るまで、ほとんど全ての真核生物のテロメアが、同じような繰返し配列によって形成されていることが明らかにされている。*2
生殖細胞では、テロメラーゼによって長いテロメアが維持されるが、体細胞ではテロメラーゼが抑制されてテロメアは徐々に短くなる。
そして、テロメアの長さが細胞の残りの分裂可能回数を決定している事が確認されたため、細胞の分裂回数を測る指標となる。
がん細胞は何らかの方法でテロメラーゼを再活性化させ、増殖回数を増やしている。
しかし、種類によってはテロメラーゼとは別の機構でテロメアを維持していることが知られており、テロメラーゼの阻害だけで全てのがん細胞を死滅させられるわけではない。
細胞が分裂する度に、テロメア配列が少しずつ失われていきます。
テロメアの長さは、細胞の分裂回数を測る尺度としてはたらき、「分裂時計?」もしくは「老化時計?」ともいわれています。体細胞では、テロメアの長さが半分ぐらいになると細胞が寿命に達し、分裂を停止します。
ヒトの生殖細胞では、テロメラーゼというテロメアDNAを合成する酵素がはたらき、細胞分裂を繰り返してもテロメアは短くなりません。テロメラーゼのはたらきは細胞のがん化とも深く関わります。多くのがん細胞ではテロメラーゼが活性化された状態にあり、決められた回数が過ぎても細胞分裂を繰り返します。*3
実際に寿命の長さとの関連が示唆される研究結果が報告されている。
高齢者では、加齢に伴って染色体の末端に位置するテロメア長は徐々に短縮しますが、百寿者や遺伝的に百歳に到達する確率が高いと考えられる百寿者の直系子孫(血縁のある子供)ではテロメア長がより長く保たれており、実際の年齢が 80 歳代でも、60 歳代の平均値に匹敵する長さを有していることが分かりました。*4
*2生理学医学賞 細胞のがん化・老化にかかわるテロメアとは? 中山潤一: http://www.nsc.nagoya-cu.ac.jp/~jnakayam/_src/sc734/pubj12.pdf
*3HOME|2014年の報道発表|染色体の末端配列テロメアの長さを保つ新たな仕組みを解明 —細胞老化の仕組みに迫る— 理工学部・田中克典教授ら: http://www.kwansei.ac.jp/press/2014/press_20140408_009020.html
*4百寿者の秘訣:健康寿命を延ばす二つの要因を発見 1,554 名を対象とする大規模高齢者コホート研究: https://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2015/osa3qr0000010ruu-att/20150804_.pdf
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