プリオン(proteinaceous infectious particles : prion) †
感染性を持つタンパク質粒子を意味する proteinaceous infectious particles の略。タンパク質性感染粒子、プリオンタンパク質(PrPc)とも呼ばれる。
体内では脳や神経の細胞膜表面に存在するタンパク質。通常であれば問題にはならないが、異常なプリオン(PrPsc)が生成されることでプリオン病の原因となる。
核酸を持たないにも関わらず、細胞に感染して自己を複製する。したがって核酸を破壊する紫外線や熱などによる処置によっても感染力が失われない。*1
プリオンは、初めてDNAやRNAを持たない病原体として確認された。
プリオンという一種のタンパク質が、ヤコブ病、BSE、スクレイピーの共通の病原体として認められた。これまでの常識では、病原体は遺伝子のDNA(デオキシリボ核酸)あるいはRNA(リボ核酸)を必ず持っていなければならなかったが、プリオンの発見によってこの常識が破られた。*2
異常なプリオンを含むものを食品として摂取すると、プリオン病を発病する可能性がある。正常なプリオンと異常なプリオンの違いは、タンパク質の二次構造の違いであるとされる。*3
プリオンタンパク質には正常型(PrPc)と異常型(感染型:PrPsc)がある*4
正常の細胞では、エンドサイトーシスによって PrPc が細胞内に再び取り込まれ、加水分解されます。プリオン病では、細胞内に取り込まれた PrPc が完全に加水分解されず、分子量 2.7-3.0万 のプリオン(PrPsc)に変ります(Lait 1996; 76: 571-578)。
PrPc の一部分が加水分解されて PrPsc に変るため、PrPc と PrPsc の一次構造は全く同じ(PrPsc は PrPc より分子量が小さい)です。しかし、PrPc と PrPsc の二次構造は異なり、この二次構造の差がPrPscの病原性を決定づけます(Endoscopy 1997; 29: 584-592)。*5
*2エスカルゴサイエンス 生田哲 感染症と免疫の仕組み
*3生命科学に興味ある人のためのプリオン病の解説: https://square.umin.ac.jp/massie-tmd/bsecjdexp.html
*4感染症学第1回 プリオン: http://www.setsunan.ac.jp/~p-bisei/Lecture_files/NID13-08.pdf
*5九州大学健康科学センター 山本和彦 プリオン病 (Prion diseases): http://www.design.kyushu-u.ac.jp/~hoken/Shiori/99Purion.htm
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