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体内時計(circadian clock)

植物や動物に備わる、環境変化に適用するための周期を作り出す仕組み。概日時計概日リズムサーカディアンリズム)とも呼ばれる。時計タンパク質によって制御される。

多くの生物が、太陽光の明暗に対応した24時間の周期を作ることが確認されている。哺乳類の場合は、内の視床下部に位置する視交叉上核体内時計中枢として概日リズムを調節しているとされる。

マウスを用いた実験により、哺乳類体内時計Per1とBMAL1の2つの遺伝子によって制御されることが示唆されている。Per1が生み出すリズムは活動開始時間と一致し、BMAL1が生み出すリズムは睡眠開始時間と一致して変化することが確認されている。*1

ヒトの場合、朝から昼にかけて、正の転写制御因子であるCLOCKBMAL1Per遺伝子転写を活性化し、その結果として増えたPerタンパク質が、夕方から夜にかけて負の転写制御因子であるCRYを連れて細胞核へ移動し、自らの転写を抑制するというサイクルが繰り返される。*2

体内時計は約24時間の周期を創りだす遺伝的に組込まれたシステムで、地上の多くの生物に存在することが確認されています。 植物は、体内時計の働きにより、1日のうちで最適な時刻に適切な生理現象が起こるように誘導します。*3

神経細胞膜電位変化は,活動電位の発生や神経伝達物質の放出に直接関わることから,中枢時計が全身の末梢時計を調節して,メリハリのある日々のリズムを作り出すために,視交叉上核神経細胞ネットワークが同期したリズム情報を出力し,他の部位や全身にリズム情報を伝えていることが示唆されます。*4

このリズムを生み出す主要な転写因子をコアクロックや上位の時計遺伝子と呼ぶ。

遺伝子によって、DNAから写し取られるRNAたんぱく質の量そのものに約24時間の周期が存在するものがあり、マウスの肝臓では、1,000以上の遺伝子発現パターンに概日リズムがあることが分かっています。Nr1d1はさまざまな概日リズム遺伝子のリズムを生み出す「上位の時計遺伝子」として有名な遺伝子です。*5

また、乳がん肝臓概日リズムに乱れを生じさせることが確認されている。

昆虫においては、寒暖の差の激しい厳しい環境で育つ北の昆虫ほど、体内時計のリズム振幅が弱く、その支配を受けにくいことが報告されており、寒暖の差の激しい厳しい環境で生存するための適応と考えられている。*6

タグ: 遺伝子 時間 体内時計

*1哺乳類の体内時計を構成する2つの概日リズム振動機構の発見: http://www.hokudai.ac.jp/news/170418_pr3.pdf
*2(株)化学同人 京都大学大学院薬学研究科 くすりをつくる研究者の仕事 薬のネタ探しから私たちに届くまで 2017/3/30
*3研究ハイライト | 世界トップレベル研究開発拠点プログラム(WPI):トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM): http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp/ja/research/2016/03/Nakamichi-Clock.php
*4生物時計中枢を司る脳の神経細胞ネットワークは同期した活動リズムを示すことを発見: http://www.hokudai.ac.jp/news/170308_pr.pdf
*5共同発表:乳がんが肝臓の遺伝子発現の概日リズムを乱すことを発見~乳がんが生体や臓器に影響する仕組みの理解に期待~: http://www.jst.go.jp/pr/announce/20170406/index.html
*6体内時計のリズムの振幅は北に行くほど小さくなる!昆虫を使った実証で発見 - 国立大学法人 岡山大学: https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id806.html

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このページの最終更新日時: 2021-02-07 (日) 09:05:23