健康用語WEB事典

MHC(major histocompatibility complex)

自己と非自己を区別するための遺伝子群、またはそれによって発現する自己個体の細胞かどうかを識別するためのペプチド細胞表面に提示する膜タンパク質*1*2*3

日本語では主要組織適合遺伝子複合体主要組織適合性抗原複合体。ヒトのMHCを特にHLAヒト白血球型抗原)と呼ぶ。*4

MHCは2つの種類(クラスⅠ分子とクラスⅡ分子)が存在する。両生類以降の動物には染色体上にクラスⅢ領域が存在する。*5

細胞によって持っているクラスや認識するクラスが異なる。例えば、樹状細胞が異物であるタンパク質を取り込み、その抗原エピトープペプチド)を提示する場合、キラーT細胞MHCクラスⅠ分子が挟み込むペプチドを、ヘルパーT細胞MHCクラスⅡ分子が挟み込むペプチドを認識する。*6

MHCは個体ごとに構造が異なっており、自己でないと認識されたものは攻撃を受けることになる。例えば、他人の皮膚を移植した場合などはMHCクラスⅠ分子が異なるため、移植した皮膚を自己ではない(非自己)と判断してTリンパ球が攻撃を行い破壊してしまう(拒絶反応)。

また、ウイルスなどの感染を受けた細胞は、そのウイルスが持つペプチドとMHCを結びつけて細胞表面に提示することで、T細胞などに自己を抗原として認識させ、自ら排除されようとする。*7

いずれの生物個体のMHCもタンパク質が結合した分子からなり、複数の遺伝子セットから作られる(ヒトのMHC遺伝子は224種類もある)が、それぞれの種の遺伝子の配列は個体によって少しずつ異なっている。*8

*1国立大学法人 東京医科歯科大学 免疫Ⅱ- Tリンパ球: http://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/textlife/immunology2.htm
*2技術評論社 西村尚子 知っているようで知らない免疫の話 ヒトの免疫はミミズの免疫とどう違う?(2010/8/25)
*3特定非営利活動法人 白血病研究基金を育てる会 小川公明 HLA の基礎知識 1: https://www.jstage.jst.go.jp/article/mhc/23/2/23_115/_pdf
*4ナツメ社 埼玉医科大学リウマチ膠原病院 教授 三村俊英 基礎からわかる免疫学
*5技術評論社 西村尚子 知っているようで知らない免疫の話 ヒトの免疫はミミズの免疫とどう違う?(2010/8/25)
*6技術評論社 桂義元 免疫はがんに何をしているのか? 見えてきた免疫のメカニズム 2016/12/25
*7春日井市教育委員会 キラーT細胞のかつやく: http://www.kasugai.ed.jp/jinryo-e/jinryou-aids/j-aids/What's%20killerT.htm
*8技術評論社 西村尚子 知っているようで知らない免疫の話 ヒトの免疫はミミズの免疫とどう違う?(2010/8/25)

ご意見・ご要望をお聞かせください。


MHCに関する情報を検索
[学術機関を検索] [政府機関を検索]



この用語を編集/画像添付
このページの最終更新日時: 2018-08-19 (日) 16:40:24