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*がん(cancer) [#p42b9d60] 国内の死因の3分の1を占め、現在も増加傾向にあると言われる[[遺伝子]]異常による疾患。((がん細胞が免疫から逃れるメカニズムの解明 免疫チェックポイント阻害剤の効果予測への応用に期待: http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/files/1605241.pdf)) 症状は、[[細胞]]が無秩序な増殖を繰り返し、周囲の[[組織]]や他の[[組織]]にまで侵入([[浸潤]])し、自他の[[組織]]を破壊する[[悪性腫瘍]]となる。 [[がん細胞]]は、[[ATP]]を常に[[解糖系]]で生成しており、大量の[[乳酸]]を生じさせる([[ワールブルク効果]])。また、[[浸潤]]や[[転移]]を行うために、[[基底膜]]の[[メラニン]]や[[コラーゲン]]を分解するための[[酵素]]の活性が高くなっている。((技術評論社 山中建生 知りたいサイエンス 地球とヒトと微生物 身近で知らない驚きの関係))((技術評論社 桂義元 免疫はがんに何をしているのか? 見えてきた免疫のメカニズム 2016/12/25)) [[がん細胞]]自体は1日5000個程度生まれていると考えられているが、生体の[[免疫]]によって[[がん細胞]]は排除されている。((メカニズム|海藻由来酵素消化低分子化フコイダンの抗腫瘍効果の研究: http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/crt/fe/mechanism.html)) がんは単一の[[細胞]]に由来する疾患であるが、進展する過程で様々な[[ゲノム]]異常を蓄積しながら不均一な[[細胞]]集団となり[[治療抵抗性]]を得ることが知られている。((化学放射線療法の効果が低い食道がんにおけるゲノム進化の過程を解明 | 研究成果 | 九州大学(KYUSHU UNIVERSITY): https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/654)) **がんに関わる言葉の区別 [#r73a1a6c] 厳密には「がん = [[悪性腫瘍]]」ではない。また「がん」と漢字の「[[癌]]」では厳密な意味が異なる。漢字で[[癌]]と書いた場合、[[血液がん]]以外のものの[[上皮細胞]]由来のがんのことを指す。つまり、[[固形がん]]のほとんどは[[癌]]である。((技術評論社 桂義元 免疫はがんに何をしているのか? 見えてきた免疫のメカニズム 2016/12/25)) >がんという語はほぼ[[悪性腫瘍]]と同義としてもちいられる。しかし[[悪性腫瘍]]とがんを同じ意味で使う事には異論もある。なぜなら[[腫瘍]]という言葉は塊([[固形がん]])を表しているが、[[白血病]]などの一部のがんは塊を作らない場合があるからである。またがんは[[悪性新生物]]とも呼ばれる。これはmalignant「悪性の」、neo「新しく」、plasm「形成されたもの」を意味する。 >がんには(漢字の)[[癌]](=[[癌腫]])、[[肉腫]]、[[白血病]]および[[悪性リンパ腫]]等が含まれる。一方、漢字の[[癌]]は[[癌腫]]と同じ意味であり、[[肉腫]]や[[白血病]]等は含まれない。((大学院講義腫瘍学特論 腫瘍学特論 がんの現状と疫学 小林正伸: http://www.hoku-iryo-u.ac.jp/~mkobaya/kobayashi/Master_course.html)) **がんの原因 [#dcc1d916] [[細胞]]内の[[DNA]]([[遺伝子]])の[[突然変異]]により発生する。最も多い[[遺伝子]]の[[変異]]は[[点突然変異]]。 >“がん”は、イニシエーション、プロモーションなどの複数の段階を経て発生すると考えられています。がんの始まりは1個の[[細胞]]の[[遺伝子]]の[[突然変異]]ですが、それが“がん”へと成長するまでには複数の[[遺伝子]]の[[突然変異]]が関係しています。[[遺伝毒性発がん物質]]は、このがんの発生過程で重要な役割を果たす[[遺伝子]]の[[突然変異]]を引き起こすため、どんなに少ない量でも発がんの原因となると考えられており、本来であれば食品のように人が摂取するものに含まれるべきものではありません。((「がん」と「遺伝毒性発がん物質」:農林水産省: http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/a_syosai/about/iden.html)) したがって、[[細胞分裂]]が行われる以上、[[がん細胞]]の発生を完全に無くすことはできない。発がん性のある物質や[[放射線]]などを避けることによって発生率を低くすることはできる。 しかし、全ての[[遺伝子]]の異常ががんの原因となるわけではない。また、通常は[[細胞]]に異常が起こった時には[[アポトーシス]]による[[細胞死]]が起こり、異常な[[遺伝子]]は排除される仕組みが備わっている。[[細胞]]の増殖や分裂に関わる[[遺伝子]]に異常が起き、かつ[[アポトーシス]]に関わる[[遺伝子]]が異常を起こすことでがん化が進むと考えられている。((技術評論社 桂義元 免疫はがんに何をしているのか? 見えてきた免疫のメカニズム 2016/12/25)) がんが発症するには、複数の[[がん遺伝子]]および[[がん抑制遺伝子]]に[[突然変異]]が蓄積する必要があり、これには20年以上の歳月を要するとされる。((中央公論新社 中川恵一 知れば怖くない 本当のがんの話)) ***遺伝子変異の原因 [#waa59285] 全体的な傾向としては、男性のがんの罹患率および死亡率は女性の約1.5倍である。年齢別に見ると、54歳以下では女性の方が多く、30代だけを見ると女性は男性の3倍の患者数となる。これは、[[性ホルモン]]の影響および生活習慣の違いなどが影響することが示唆されている。 主に生活習慣による影響が大きく、実際に結婚後長い時間を暮らす夫婦は同じ[[がん]]にかかりやすい傾向がある。 具体的には、以下の事柄ががんの発生原因の半分以上に関わる。((中央公論新社 中川恵一 知れば怖くない 本当のがんの話)) -発がん性物質 --[[タバコ]](喫煙) --[[アルコール]]飲料(飲酒) -食事の栄養バランス -[[塩分]]の過剰摂取 ー運動不足 世界で初めて発がん性物質ががんを引き起こすことを実証したのは山極勝三郎。1915年にコールタールによる人工がんを発生させた。((PHP研究所 竹内薫 丸山篤史 白くて眠れなくなる遺伝子(2016/1/5))) **がんの治療 [#x1edde33] 病巣が2cm以内の早期発見や[[転移]]のない段階で発見されれば[[手術]]や[[放射線]]治療によって完治する場合もあるが、[[転移]]があると[[副作用]]の強い[[抗がん剤]]による治療を行う必要がある。((技術評論社 桂義元 免疫はがんに何をしているのか? 見えてきた免疫のメカニズム 2016/12/25)) [[がん細胞]]を認識し、排除に働く[[免疫細胞]]としては以下のものがある。これらによる[[がん細胞]]を排除する仕組みを[[免疫監視機構]]と呼ぶ。 -[[NK細胞]] -[[NKT細胞]] -[[キラーT細胞]] しかし、[[がん細胞]]の元は自己の[[細胞]]であり[[抗原性]]が低いため、[[免疫]]による治癒の可能性は低い。 **死因となるがんの種類 [#i2b8df35] 2014年における、男女別の死因となったがんの種類は以下の通り。 |~順位|>|~性別| |~|~男性|~女性| |1|[[肺がん]]|[[大腸がん]]| |2|[[胃がん]]|[[肺がん]]| |3|[[大腸がん]]|[[胃がん]]| |4|[[肝臓がん]]|[[膵臓がん]]| |5|[[膵臓がん]]|[[乳がん]]| [[大腸がん]]は男女とも罹患率および死亡率が共に高い。 &tag(がん,疾患);
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*がん(cancer) [#p42b9d60] 国内の死因の3分の1を占め、現在も増加傾向にあると言われる[[遺伝子]]異常による疾患。((がん細胞が免疫から逃れるメカニズムの解明 免疫チェックポイント阻害剤の効果予測への応用に期待: http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/files/1605241.pdf)) 症状は、[[細胞]]が無秩序な増殖を繰り返し、周囲の[[組織]]や他の[[組織]]にまで侵入([[浸潤]])し、自他の[[組織]]を破壊する[[悪性腫瘍]]となる。 [[がん細胞]]は、[[ATP]]を常に[[解糖系]]で生成しており、大量の[[乳酸]]を生じさせる([[ワールブルク効果]])。また、[[浸潤]]や[[転移]]を行うために、[[基底膜]]の[[メラニン]]や[[コラーゲン]]を分解するための[[酵素]]の活性が高くなっている。((技術評論社 山中建生 知りたいサイエンス 地球とヒトと微生物 身近で知らない驚きの関係))((技術評論社 桂義元 免疫はがんに何をしているのか? 見えてきた免疫のメカニズム 2016/12/25)) [[がん細胞]]自体は1日5000個程度生まれていると考えられているが、生体の[[免疫]]によって[[がん細胞]]は排除されている。((メカニズム|海藻由来酵素消化低分子化フコイダンの抗腫瘍効果の研究: http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/crt/fe/mechanism.html)) がんは単一の[[細胞]]に由来する疾患であるが、進展する過程で様々な[[ゲノム]]異常を蓄積しながら不均一な[[細胞]]集団となり[[治療抵抗性]]を得ることが知られている。((化学放射線療法の効果が低い食道がんにおけるゲノム進化の過程を解明 | 研究成果 | 九州大学(KYUSHU UNIVERSITY): https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/654)) **がんに関わる言葉の区別 [#r73a1a6c] 厳密には「がん = [[悪性腫瘍]]」ではない。また「がん」と漢字の「[[癌]]」では厳密な意味が異なる。漢字で[[癌]]と書いた場合、[[血液がん]]以外のものの[[上皮細胞]]由来のがんのことを指す。つまり、[[固形がん]]のほとんどは[[癌]]である。((技術評論社 桂義元 免疫はがんに何をしているのか? 見えてきた免疫のメカニズム 2016/12/25)) >がんという語はほぼ[[悪性腫瘍]]と同義としてもちいられる。しかし[[悪性腫瘍]]とがんを同じ意味で使う事には異論もある。なぜなら[[腫瘍]]という言葉は塊([[固形がん]])を表しているが、[[白血病]]などの一部のがんは塊を作らない場合があるからである。またがんは[[悪性新生物]]とも呼ばれる。これはmalignant「悪性の」、neo「新しく」、plasm「形成されたもの」を意味する。 >がんには(漢字の)[[癌]](=[[癌腫]])、[[肉腫]]、[[白血病]]および[[悪性リンパ腫]]等が含まれる。一方、漢字の[[癌]]は[[癌腫]]と同じ意味であり、[[肉腫]]や[[白血病]]等は含まれない。((大学院講義腫瘍学特論 腫瘍学特論 がんの現状と疫学 小林正伸: http://www.hoku-iryo-u.ac.jp/~mkobaya/kobayashi/Master_course.html)) **がんの原因 [#dcc1d916] [[細胞]]内の[[DNA]]([[遺伝子]])の[[突然変異]]により発生する。最も多い[[遺伝子]]の[[変異]]は[[点突然変異]]。 >“がん”は、イニシエーション、プロモーションなどの複数の段階を経て発生すると考えられています。がんの始まりは1個の[[細胞]]の[[遺伝子]]の[[突然変異]]ですが、それが“がん”へと成長するまでには複数の[[遺伝子]]の[[突然変異]]が関係しています。[[遺伝毒性発がん物質]]は、このがんの発生過程で重要な役割を果たす[[遺伝子]]の[[突然変異]]を引き起こすため、どんなに少ない量でも発がんの原因となると考えられており、本来であれば食品のように人が摂取するものに含まれるべきものではありません。((「がん」と「遺伝毒性発がん物質」:農林水産省: http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/a_syosai/about/iden.html)) したがって、[[細胞分裂]]が行われる以上、[[がん細胞]]の発生を完全に無くすことはできない。発がん性のある物質や[[放射線]]などを避けることによって発生率を低くすることはできる。 しかし、全ての[[遺伝子]]の異常ががんの原因となるわけではない。また、通常は[[細胞]]に異常が起こった時には[[アポトーシス]]による[[細胞死]]が起こり、異常な[[遺伝子]]は排除される仕組みが備わっている。[[細胞]]の増殖や分裂に関わる[[遺伝子]]に異常が起き、かつ[[アポトーシス]]に関わる[[遺伝子]]が異常を起こすことでがん化が進むと考えられている。((技術評論社 桂義元 免疫はがんに何をしているのか? 見えてきた免疫のメカニズム 2016/12/25)) がんが発症するには、複数の[[がん遺伝子]]および[[がん抑制遺伝子]]に[[突然変異]]が蓄積する必要があり、これには20年以上の歳月を要するとされる。((中央公論新社 中川恵一 知れば怖くない 本当のがんの話)) ***遺伝子変異の原因 [#waa59285] 全体的な傾向としては、男性のがんの罹患率および死亡率は女性の約1.5倍である。年齢別に見ると、54歳以下では女性の方が多く、30代だけを見ると女性は男性の3倍の患者数となる。これは、[[性ホルモン]]の影響および生活習慣の違いなどが影響することが示唆されている。 主に生活習慣による影響が大きく、実際に結婚後長い時間を暮らす夫婦は同じ[[がん]]にかかりやすい傾向がある。 具体的には、以下の事柄ががんの発生原因の半分以上に関わる。((中央公論新社 中川恵一 知れば怖くない 本当のがんの話)) -発がん性物質 --[[タバコ]](喫煙) --[[アルコール]]飲料(飲酒) -食事の栄養バランス -[[塩分]]の過剰摂取 ー運動不足 世界で初めて発がん性物質ががんを引き起こすことを実証したのは山極勝三郎。1915年にコールタールによる人工がんを発生させた。((PHP研究所 竹内薫 丸山篤史 白くて眠れなくなる遺伝子(2016/1/5))) **がんの治療 [#x1edde33] 病巣が2cm以内の早期発見や[[転移]]のない段階で発見されれば[[手術]]や[[放射線]]治療によって完治する場合もあるが、[[転移]]があると[[副作用]]の強い[[抗がん剤]]による治療を行う必要がある。((技術評論社 桂義元 免疫はがんに何をしているのか? 見えてきた免疫のメカニズム 2016/12/25)) [[がん細胞]]を認識し、排除に働く[[免疫細胞]]としては以下のものがある。これらによる[[がん細胞]]を排除する仕組みを[[免疫監視機構]]と呼ぶ。 -[[NK細胞]] -[[NKT細胞]] -[[キラーT細胞]] しかし、[[がん細胞]]の元は自己の[[細胞]]であり[[抗原性]]が低いため、[[免疫]]による治癒の可能性は低い。 **死因となるがんの種類 [#i2b8df35] 2014年における、男女別の死因となったがんの種類は以下の通り。 |~順位|>|~性別| |~|~男性|~女性| |1|[[肺がん]]|[[大腸がん]]| |2|[[胃がん]]|[[肺がん]]| |3|[[大腸がん]]|[[胃がん]]| |4|[[肝臓がん]]|[[膵臓がん]]| |5|[[膵臓がん]]|[[乳がん]]| [[大腸がん]]は男女とも罹患率および死亡率が共に高い。 &tag(がん,疾患);
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