n-3系脂肪酸(n-3 fatty acids) †
不飽和脂肪酸のグループのひとつ。カルボキシル基側の反対側の炭素(ω位)から数えて3番目の炭素結合部に二重結合を持つためオメガ3系脂肪酸(ω-3脂肪酸)とも呼ばれる。*1
植物プランクトン(α-リノレン酸を生成する)を食用とする青身魚に多く含まれる。*2
n-3系脂肪酸には、n-6系脂肪酸が生成するホルモン様物質を抑え、動脈硬化の予防効果等があるされる。*3
炎症を沈める働きをする様々な脂質メディエーターの原料となる。特にDHAでは脂肪の増殖を抑えて肥満を抑制する効果があることが示唆されている。
魚介類にはドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)等の多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれており、これらによる抗動脈硬化、抗腫瘍、抗アレルギー作用が報告されている。… 本研究では、3T3-L1細胞系において、n-3系脂肪酸の中でも特に DHA が脂肪細胞の分化に必須な転写因子や脂質合成系酵素の遺伝子発現を抑制することで脂肪細胞の分化を抑制することが明らかとなった。動物実験においては、多価不飽和脂肪酸の組成がことなる4種類の食餌を与えたマウスで検証したところ、体重には食餌群間で有意な差は観察されなかった。一方で、脂肪組織の重量は、DHA の豊富な魚油の摂取では他の食餌群と比較して有意に低い値を示した。*4
また、炎症性サイトカインの産生を抑制してがん悪液質を改善する効果が報告されている。*5
エポキシ化オメガ3脂肪酸 †
n-3系脂肪酸の二重結合がエポキシ化されたものは、肺血管の異常な線維化を抑制することが報告されている。*6
エポキシ化n-3系脂肪酸は難病の肺高血圧症の進行に従って減少することが知られ、その産生酵素であるPAF-AH2が肺高血圧症と深く関連することが確認されている。
アレルギー患者では、マスト細胞がこれを豊富に産生することにより、マスト細胞自身のIgE・抗原依存的な活性化を促進しているとされる。*7
*2女子学生における血清 n-3 系多価不飽和脂肪酸について 南九州大学 管理栄養学科: http://www.nankyudai.ac.jp/library/pdf/45a-1ogawa.pdf
*3秋田大学 「マイプレート」を活用した脂質栄養指導の実践: http://air.lib.akita-u.ac.jp/dspace/bitstream/10295/3050/1/kbjs71(79).pdf
*4秋田大学 多価不飽和脂肪酸による肥満予防に関する基礎的研究: http://www.akita-u.ac.jp/eduhuman/graduate/abstract_pdf/11-030.pdf
*5がん悪液質の病態と管理 片山寛次 福井大学医学部附属病院がん診療推進センター: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspen/30/4/30_917/_article/-char/ja/
*6魚の油「オメガ3脂肪酸」由来の新たな代謝物が難病の肺高血圧症の進行を抑える:[慶應義塾]: https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2022/6/29/28-125146/
*7KAKEN — 研究課題をさがす | エポキシ化ω3脂肪酸によるマスト細胞活性化制御機構の全貌解明 (KAKENHI-PROJECT-18K14898): https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K14898/
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