トランス脂肪酸(trans-fatty acids) †
シス型の脂肪酸が主である不飽和脂肪酸に水素添加を行なった加工油(硬化油)に含まれる、化学構造が変化した脂肪酸。トランス型脂肪酸とも呼ばれる。
牛や羊由来の肉や脂質には、それらの動物が持つ酵素によってトランス脂肪酸(主にバクセン酸)が作られるため、天然で含まれる場合がある。*1*2
牛や羊などの反芻(はんすう)動物では、胃の中の微生物の働きによってトランス脂肪酸が作られるため、牛肉や羊肉、牛乳や乳製品の中には微量のトランス脂肪酸が含まれます。*3
トランス脂肪酸は健康に悪影響があるとされているが、その根拠となっている実験を疑問視する機関もある。(以下その一部)
米国での疫学調査の結果は、それほど明確なものではありません。たとえば健康プロ(医療従事者)の人を対象とした追跡結果では、トランス脂肪酸摂取の多い群は少ない群より 1.6 倍ほど心臓病死が多く、この差は統計的に有意でありました(相対危険度が 1.6 といいます)。ところが、多因子補正をすると 1.2 倍になり、統計的に有意でなくなりました(図 2)。すなわちトランス脂肪酸の摂取が多くても、心臓病が増えるわけではありません。*5
農林水産省のサイトには、トランス脂肪酸の摂りすぎによるLDLの増加とHDLの減少については記載されているが、その他の健康への影響については以下のように記載されている。*6
トランス脂肪酸による健康への悪影響を示す研究の多くは、トランス脂肪酸をとる量が多い欧米人を対象としたものであり、日本人の場合にも同じ影響があるのかどうかは明らかではありません。… 油脂の加工でできるトランス脂肪酸と天然にあるトランス脂肪酸では、健康に及ぼす影響に違いがあるのかどうか、また、たくさんの種類があるトランス脂肪酸の中でどのトランス脂肪酸が健康に悪影響を及ぼすのかについては、十分な証拠がありません。
しかし、2017年、トランス脂肪酸が細胞死を促進し、動脈硬化等や肥満、糖尿病などの生活習慣病の原因となることが確認された。
食品中含有量の最も高いエライジン酸をはじめとしたトランス脂肪酸が、細胞外ATP誘導性細胞死を著しく促進することを見いだしました。… 詳細な解析から、トランス脂肪酸は、細胞外ATPによって誘導されるASK1-p38経路?の活性化を亢進することで、細胞死を促進することが明らかになりました。*7
*2金城学院大学 ニューヨークのレストランから排除されたトランス脂肪酸 トランス脂肪酸(水素添加植物油)の何が悪い?: http://www.kinjo-u.ac.jp/orc/document/topic2.pdf
*3第十九回コラム:管理栄養士 福永琴路 | 成人医学センター: http://www.twmu.ac.jp/IOG/column/file19.html
*4金城学院大学 ニューヨークのレストランから排除されたトランス脂肪酸 トランス脂肪酸(水素添加植物油)の何が悪い?
*5金城学院大学 ニューヨークのレストランから排除されたトランス脂肪酸 トランス脂肪酸(水素添加植物油)の何が悪い?
*6すぐにわかるトランス脂肪酸:農林水産省: http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/#5
*7トランス脂肪酸による疾患発症機序の一端を解明-動脈硬化症発症のメカニズム解明に繋がる発見- | プレスリリース | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-: http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2017/04/press20170417-02.html
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