HEALTH WORDS / 用語解説
ベンゾ(a)アントラセン
a
ベンゾ(a)アントラセンとは、5つのベンゼン環が縮合した構造を持つ多環芳香族炭化水素(PAHs)の一種である。1
化学式は$C18H12$で表され、構造的にはアントラセンのベンゼン環にさらにベンゼン環が結合した形をしている。1
常温では無色から淡黄色の固体または針状結晶として存在し、水には極めて溶けにくい一方で、有機溶媒には溶解する性質を示す。1
ベンゾ(a)アントラセンは、石炭、石油、木材などの有機化合物が不完全燃焼する際や、タバコの煙、自動車の排気ガス、工場からの排煙などに含まれて環境中へ放出される。1
また、焦げた肉や魚などの食品中にも、加熱調理の過程で生成されることがあるため、日常的な環境や食事を通じて微量が人体に取り込まれる可能性がある。1
生物学的・毒性学的な観点からは、ベンゾ(a)アントラセンは強い発がん性および変異原性を有することで知られている。1
体内に入ったベンゾ(a)アントラセンは、肝臓などの代謝酵素(シトクロムP450など)によってエポキシ化物などの活性代謝物へと変換される。1
この代謝産物がDNAと共有結合を形成してDNA付加体を生成することにより、遺伝子変異を誘発し、最終的に腫瘍形成や発がんの引き金となると考えられている。1
国際的ながん研究機関である国際がん研究機関(IARC)では、ベンゾ(a)アントラセンをヒトに対する発がん性が疑われる物質(グループ2A)に分類している。2
環境中の挙動としては、難分解性であり、土壌や水系の底質に長期間残留しやすい性質を持っている。1
そのため、食物連鎖を通じて水生生物や陸上生物の体内に蓄積される生物濃縮のリスクも指摘されており、生態系および公衆衛生上の重要な環境汚染物質として監視の対象となっている。1
産業分野や実験室においては、取り扱いに際して吸入や皮膚接触を防ぐための局所排気装置の使用や、適切な保護具の着用など、厳重な安全管理が求められる物質である。1