HEALTH WORDS / 用語解説
ホメオボックス遺伝子
Homeobox gene
ホメオボックス遺伝子とは、動物や植物などの発生過程において、体の基本構造や軸の形成(前後軸や体節など)を統御するマスター遺伝子群を指す総称であり、保存性の高い約180塩基対の塩基配列であるホメオボックスを有している。1
ホメオボックス遺伝子がコードするタンパク質の領域はホメオドメインと呼ばれ、約60個のアミノ酸から構成される立体構造をとり、標的となるDNAの特定塩基配列に特異的に結合する能力を持つ。2
このホメオドメインはDNA結合ドメインとして機能し、多様な遺伝子発現を転写レベルで調節することによって、多細胞生物の細胞運命の決定や組織・器官の正しい形態形成に中心的な役割を果たしている。1
真核生物におけるホメオボックス遺伝子には、ショウジョウバエのビソトラックス複合体やアンテナペディア複合体として見出されたHox遺伝子をはじめとして、数多くのファミリーが存在しており、これらは進化の過程で非常に高度に保存されてきた。2
発生初期の空間的および時間的な遺伝子発現の制御において、ホメオボックス遺伝子群は連続した体節や付属肢のアイデンティティを規定し、頭尾軸に沿った正確なパターン形成を実現するための指令塔として働いている。1
万が一、このホメオボックス遺伝子に変異や遺伝子発現の異常が生じた場合には、本来とは異なる部位に別の器官が形成されるような劇的な形態異常(ホメオシス変異)を引き起こすことが知られている。2
また、ホメオボックス遺伝子の異常や機能異常は、形態形成の破綻だけでなく、細胞の増殖や分化のコントロール不全を招くため、様々な悪性腫瘍やがんの発症・進展にも深く関与していることが明らかにされている。1
このように、ホメオボックス遺伝子は生物の進化的な類縁関係を紐解くための重要な比較ゲノム科学の対象であると同時に、発生学や分子生物学、さらには疾患研究においても極めて高い重要性を持つ基礎医学・生物学用語の一つである。2
参考文献・出典
- 独立行政法人科学技術振興機構 ライフサイエンスデータベース統合推進事業: https://togodb.biosciencedbc.jp/gene_ontology/evidence/GO:0003677 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
- ライフサイエンス統合データベースセンター: https://integbio.jp/dbcatalog/record/nbbr001633 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4