HEALTH WORDS / 用語解説
IEGs
Immediate Early Genes
IEGsとは、日本語で初期応答遺伝子または即時型初期遺伝子と呼ばれ、タンパク質の生合成を阻害するタンパク質合成阻害剤の存在下であっても、細胞への刺激に応じて転写・発現が誘導される遺伝子群のことである。1
IEGsは神経細胞におけるシナプス可塑性、記憶の固定化、学習などの高次脳機能において中心的な役割を果たしていることが知られている。1 神経活動が亢進すると、細胞外シグナルが細胞質を介して核へと伝達され、クロマチン構造のリモデル化や転写因子の活性化が引き起こされることで、IEGsの転写が迅速かつ一過性に引き起こされる。2
典型的なIEGsの例としては、c-Fos、FosB、Egr1(Zif268やKrox24とも呼ばれる)、Arc(Activity-regulated cytoskeleton-associated protein)などが挙げられる。3 これらの遺伝子によってコードされるタンパク質の多くは転写因子として機能し、さらに二次的な遺伝子発現制御ネットワーク(遅延応答遺伝子群の誘導など)を駆動することによって、細胞の分化、増殖、神経回路の再編といった長期的な細胞応答を統御している。3
脳の神経科学研究においては、特定の学習課題や環境変化に応答して活性化した神経細胞を可視化・標識するための分子マーカーとしても、IEGsの発現解析が広く利用されている。2 例えば、Arcやc-FosのmRNAあるいはタンパク質の発現を免疫組織化学的手法やin situハイブリダイゼーション法によって検出することにより、記憶の固定化に関与する神経回路網(エングラム)の同定が可能となる。1
参考文献・出典
- 独立行政法人科学技術振興機構 ライフサイエンス新着論文レビュー: https://doi.org/10.7875/first.2016.037 ↩1 ↩2 ↩3
- 名古屋大学: https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_E/research/lab/neurogenetics/index.html ↩1 ↩2
- 国立国会図書館サーチ(CiNii Research): https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001206126588288 ↩1 ↩2