HEALTH WORDS / 用語解説
TLX1
T-cell leukemia homeobox 1
TLX1とは、T細胞白血病に関連するホメオボックス遺伝子であり、染色体異常によって発現が異常化することで腫瘍化に関与する転写因子をコードする遺伝子である。1 ヒトにおいてTLX1遺伝子は、第10番染色体の長腕(10q24)に位置している。2 この遺伝子は、かつてHOX11という名称でも知られており、正常な発生過程において脾臓の発生や分化に必須の役割を果たしていることが明らかにされている。3
分子生物学的特徴として、TLX1はDNA結合ドメインであるホメオドメインを保持しており、特異的な塩基配列を認識して下流の遺伝子の転写を制御するタンパク質を産生する。4 正常な成人組織におけるTLX1の発現は厳密に制御されており、通常は不活化されているか、極めて低いレベルにとどまっている。5
しかしながら、染色体の転座などの遺伝子異常が生じると、TLX1遺伝子の発現異常が引き起こされる。 特に、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)の患者の一部において、TLX1遺伝子がT細胞受容体の遺伝子座(7q35や14q11など)と転座を起こすことが知られている。6 このような染色体転座の結果、T細胞特異的なエンハンサーやプロモーターの強力な制御下でTLX1が持続的に過剰発現し、細胞周期の制御異常やアポトーシスの抑制を誘導することで、悪性腫瘍化の主要な推進力として作用する。7
臨床的および病理学的な観点から、TLX1の発現異常を伴うT-ALLは、独特の遺伝子発現プロファイルを示し、予後や治療応答性の解析において重要なバイオマーカーの一つとして位置づけられている。8 これまでの基礎医学および臨床医学の研究により、TLX1が関与する白血病の病態生理の解明が進められており、将来的な分子標的治療薬の開発に向けた標的分子としても注目を集めている。9
参考文献・出典
- National Center for Biotechnology Information (NCBI): https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/3154 ↩
- Genetests: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1116/ ↩
- UniProt: https://www.uniprot.org/uniprotkb/P31373/entry ↩
- Protein Data Bank Japan (PDBj): https://pdbj.org/mine/summary/2lkx ↩
- Human Protein Atlas: https://www.proteinatlas.org/ENSG00000185950-TLX1 ↩
- Atlas of Genetics and Cytogenetics in Oncology and Haematology: https://atlasgeneticsoncology.org/gene/410/tlx1 ↩
- National Cancer Institute (NCI): https://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/tlx1 ↩
- Leukemia & Lymphoma: https://www.tandfonline.com/doi/full/10.3109/10428194.2014.908855 ↩
- Blood: https://ashpublications.org/blood/article/103/6/2077/100438/TLX1-HOX11-expression-in-adult-T-cell-acute ↩