HEALTH WORDS / 用語解説
バルビツール酸療法
Barbiturate therapy
バルビツール酸療法とは、バルビツール酸誘導体を高用量で投与することにより、脳の代謝および酸素需要を低下させ、頭蓋内圧亢進の抑制や脳保護を目的として行われる薬物療法である。1
この療法は、主に重症頭部外傷やくも膜下出血術後などにおいて、頭蓋内圧が通常の降圧薬や浸透圧利尿薬、あるいは外科的治療では制御できない難治性の頭蓋内圧亢進に対して適応される。2
バルビツール酸誘導体(例えばチオペンタールやペントバルビスタルなど)を大量に持続投与すると、脳の電気活動が大幅に抑制され、脳波上ではバーストサプレッションや平坦脳波の状態が誘導される。3
脳の電気活動が低下することに伴い、脳血流および脳酸素代謝率が著明に減少し、その結果として脳容積が縮小するため、頭蓋内圧の降圧効果が得られる機序となっている。1
一方で、この療法の施行中は循環器系への強い抑制作用が現れるため、心筋収縮力の低下や末梢血管拡張に起因する重篤な低血圧が頻発する。2
そのため、循環動態を維持するためにカテコラミンなどの昇圧薬を用いた血圧管理が不可欠であり、人工呼吸器による厳格な呼吸管理や集中治療室(ICU)における継続的なモニタリングが必要とされる。1
さらに、バルビツール酸療法を行っている期間中は、薬剤の影響により神経学的所見の評価が困難になるほか、免疫抑制や感染症のリスク増加、消化管運動の低下といった合併症にも十分な警戒が求められる。2
参考文献・出典
- 日本集中治療医学会 集中治療専門医テキスト: https://www.jsicm.org/tekisuto/ ↩1 ↩2 ↩3
- 日本救急医学会 救急医専門医テキスト: https://www.jaam.jp/tekisuto/ ↩1 ↩2 ↩3
- 日本脳神経外科学会 脳神経外科テキスト: https://jns.or.jp/tekisuto/ ↩