HEALTH WORDS / 用語解説
ヒメモノアラガイ
Austropeplea ollula
ヒメモノアラガイとは、腹足綱(巻貝の仲間)有肺目モノアラガイ科に分類される淡水産の巻貝の一種である。1 水田、沼沢地、池、水路などの止水域や流れの緩やかな水域に広く生息し、日本を含むアジア地域に分布している。2
殻の高さ(殻高)は通常10mmから15mm程度であり、モノアラガイ科の中では比較的小型である。2 殻の質は薄く、半透明であり、黄褐色から淡褐色を呈する。螺層の巻き数は4〜5階ほどで、最後の体層が非常に大きく発達するという形態的な特徴を持つ。殻口は広範な卵形をなし、軟体部が透けて見えることもある。頭部には1対の平べったい触角があり、その基部の内側に眼が位置している。
本種は雌雄同体であり、交尾を経て産卵を行う。水草の茎や葉、あるいは石の表面などにゼリー質に包まれた卵塊を産み付ける。卵から孵化した幼貝は直接底生生活または付着生物としての生活を始め、成長して成貝となる。食性は植食性および腐食性であり、水草の藻類やデトリタス、枯死植物などを舐め取るようにして摂食する。
生態学的および寄生虫学的観点において、ヒメモノアラガイは医学・獣医学的に重要な宿主として知られている。本種は肝蛭(Fasciola hepatica)などの吸虫類における主要な中間宿主の一つであり、寄生虫の生活環において不可欠な役割を果たす。3 肝蛭のミラシディア(毛蚴)がヒメモノアラガイの体内に侵入すると、スポロシスト、レディア、セルカリア(尾幼虫)へと幼生期の発育が進む。その後、成長したセルカリアが貝の体外へ遊離し、水草などに付着してメタセルカリア(嚢状幼虫)となる。家畜やヒトがこのメタセルカリアが付着した植物を経口摂取することで感染が成立し、肝蛭症を引き起こす原因となる。4
このように、ヒメモノアラガイは単なる淡水性の貝類としての生態だけでなく、人獣共通感染症(ズーノーシス)の媒介動物としても学術的な調査や防疫上の監視対象とされている。
参考文献・出典
- 生物多様性センター: https://www.biodic.go.jp/JIBOP/db/db_syo_list.html ↩
- 国立環境研究所 侵入生物DB: https://www.nies.go.jp/biod Invasive/DB/index.html ↩1 ↩2
- 国立感染症研究所: https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/405-fascioliasis-intro.html ↩
- 農研機構: https://www.naro.go.jp/laboratory/njri/publication/files/livestock_disease_manual.pdf ↩