HEALTH WORDS / 用語解説
ビルハルツ住血吸虫
Schistosoma haematobium
扁形動物門 吸虫綱 有輪目 住血吸虫科に分類される人体寄生虫であり、アフリカ大陸および中東地域を中心に広く風土病として分布している。1
他の多くの吸虫類とは異なり、雌雄異体である点が大きな特徴であり、成虫は細長い糸状の体型をしており、宿主の血管内で常にペアを形成して生活している。2
生活環において、終宿主であるヒトの体内で交尾した雌が血管壁を通じて膀胱や尿管の粘膜下に卵を産生する。1
組織内に産み落とし切れない卵は膀胱壁などを突き破って尿とともに体外へと排出されるが、一部の卵は周囲の組織に留まり肉芽腫性の炎症を引き起こす原因となる。2
体外に排泄された卵は淡水中で孵化し、ミラキディウムと呼ばれる繊毛を有する幼虫となって水中を遊泳する。1
水中を遊泳するミラキディウムは、特定の中間宿主である巻貝類(主にヒメモノアラガイ属やブルヌス属などの淡水巻貝)に侵入して寄生する。2
中間宿主の体内において、スポロシストとしての無性生殖を経て大量のセルカリアと呼ばれる尾虫へと発育・増殖し、再び淡水中へと放出される。1
セルカリアは遊泳して水中にいるヒトの皮膚に接触すると、皮膚の表面から直接侵入し、その際に尾部を切り離してシストソミルジュという形態に変異する。2
皮膚から侵入した幼虫は血管やリンパ管に入り込み、血流に乗って心臓を経て肺を通過した後、肝臓へと運ばれてそこで成虫へと発育する。1
成虫に成長したペアは、門脈系から膀胱や骨盤周囲の静脈叢へと移動し、最終的な寄生部位に定着して産卵を繰り返す生活環を完成させる。2
感染経路は主としてセルカリアに汚染された淡水(湖や河川など)での水浴びや農作業、遊泳などであり、皮膚と水が接触することによって感染が成立する。2
臨床的特徴として、感染初期にはセルカリアが皮膚から侵入する際に皮膚炎(痒疹や発疹)や、発熱、蕁麻疹、好酸球増多を伴う急性住血吸虫症(カタヤマ熱)を発症することがある。1
慢性期においては、組織内に沈着した虫卵に対する免疫反応により肉芽腫が形成され、血尿が本症の最も特徴的な臨床症状として現れる。2
さらに病態が長期化し進行すると、膀胱壁の線維化、尿管狭窄、水腎症を引き起こし、腎機能障害や膀胱癌の発生リスクを著しく高めることが知られている。2
診断にあたっては、採取した尿中から特徴的な終末棘を持つ虫卵を検出し顕微鏡で確認することが基本となるほか、血清学的検査による抗体検出なども補助的に用いられる。1
治療にはプラジカンテルなどの駆虫薬が第一選択薬として用いられ、成虫を駆除することによって虫卵産生を停止させ、病態の進行を防ぐ薬物療法が行われる。2
予防および対策としては、汚染された淡水への接触を避けることや、中間宿主である淡水巻貝の駆除、安全な上水道の整備や衛生教育の徹底が極めて重要である。1