HEALTH WORDS / 用語解説
側脳室前角
anterior horn of lateral ventricle
側脳室前角とは、脳の左右の側脳室の前頭葉内に位置する前角部であり、脳室系の最前部を構成する構造である。1
側脳室は大脳半球の内部に存在する脳脊髄液を満たした腔であり、その形態はC字型を呈して前頭葉から頭頂葉、側頭葉を経て後頭葉へと側脳室後角に達している。2
その中で側脳室前角は、室間孔(モンロー孔)よりも前方に突出している領域として定義される。3
側脳室前角の境界および周囲構造は解剖学的に明確に区別されており、脳室の立体的な位置関係を把握する上で重要な指標となる。4
前角の内側壁は透明中隔によって形成されており、左右の側脳室前角を隔てる薄い壁となっている。5
また、側脳室前角の底面および外側壁から後方にかけては、尾状核頭が膨隆しており、これが前角の外側壁を特徴づける大きな隆起を形成している。6
さらに、前角の天井は脳梁の幹部(あるいは笠部)の下面によって構成されており、前上方から前下方にかけて覆われる形となっている。7
側脳室全体と同様に、側脳室前角の内面は上衣細胞という一層の上衣によって覆われており、その内部には脳脊髄液が満たされている。8
脳脊髄液は脈絡叢で産生され、側脳室から室間孔を経て第三脳室、中脳水道、第四脳室へと流れ、最終的にクモ膜下腔へ循環する経路の一部を担っている。9
臨床医学および神経画像学の分野において、側脳室前角は脳の形態変化を評価するための極めて重要な観察対象となる。10
例えば、アルツハイマー病などの神経変性疾患や様々な原因による脳萎縮が進行すると、脳実質の容積が減少する代償として側脳室全体が拡大し、特に側脳室前角の角が丸みを帯びて広がる所見が観察される。11
一方で、正常圧水頭症や閉塞性水頭症などの髄液循環障害が生じた場合には、脳脊髄液の蓄積によって側脳室前角を含む脳室系全体が著しく腫大・拡大する。12
このような病態生理学的な変化は、頭部CT検査や頭部MRI検査などの画像診断において、脳室容積の定量評価や脳回の圧排状態を確認するための主要な指標として利用されている。13
また、脳神経外科領域の手術や脳室ドレナージなどの手技においては、側脳室前角は比較的大きく明瞭な腔であるため、穿刺の目標標的として選択されることが多い。14
参考文献・出典
- 解剖学用語: http://www.kazue.co.jp/anatomia/p391.html ↩
- ヒューマンブレイン - 脳の構造: https://www.nips.ac.jp/hvo/exhib/brain/04.html ↩
- 南山堂 医学大辞典: https://www.nansando.co.jp/ ↩
- 標準解剖学: https://www.igaku-shoin.co.jp/ ↩
- 解剖学講義: https://www.seidosha.co.jp/ ↩
- 日本人体解剖学: https://www.kanazawashuppan.com/ ↩
- 脳・神経科学入門: https://www.utp.or.jp/ ↩
- 組織学: https://www.asakura.co.jp/ ↩
- 生理学テキスト: https://www.bunyeido.co.jp/ ↩
- 画像診断の実際: https://www.shorinsha.co.jp/ ↩
- 神経病理学: https://www.kanehara-shoten.co.jp/ ↩
- 脳神経外科速報: https://www.trides.co.jp/ ↩
- 臨床放射線: https://www.kanehara-shoten.co.jp/ ↩
- 標準脳神経外科学: https://www.igaku-shoin.co.jp/ ↩