ホーム脳室容積

HEALTH WORDS / 用語解説

脳室容積

Ventricular volume

脳室容積とは、脳内に存在する脳室系(側脳室、第三脳室、第四脳室)の内部を満たす脳脊髄液の占める体積のことを指す。1

脳室容積の測定は、頭部画像検査であるMRI(磁気共鳴画像法)やCT(コンピュータ断層撮影)を用いて行われ、神経放射線学や精神医学、脳神経外科などの領域において重要な指標として利用されている。2

健常な成人においても、加齢に伴い脳実質が緩やかに萎縮することに伴い、脳室容積は生理的な範囲でわずかに拡大する傾向が知られている。3

しかしながら、この脳室容積が正常な加齢変化の範囲を逸脱して異常に増大している場合、水頭症や脳萎縮を伴う各種の神経変性疾患(アルツハイマー病などの認知症や統合失調症など)の病態を示唆する所見として評価される。4

特に正常圧水頭症においては、歩行障害、認知障害、尿失禁といった特徴的な臨床症状に加え、画像検査での著明な脳室容積の拡大が診断上の決定的な徴候となる。5

また、アルツハイマー病の進行過程においては、記憶や学習に深く関与する海馬を含む側頭葉の萎縮が先行し、その結果として代償性に周囲の側脳室下角を中心とした脳室容積の拡大が引き起こされる。6

統合失調症患者を対象とした多くの脳画像研究では、初発時あるいは慢性期を問わず、健常対照群と比較して統計学的に有意な脳室容積の増大が認められることが一貫して報告されている。7

脳室容積の定量化には、従来は二次元的な画像診断による計測や手動による手作業での体積測定が行われていたが、近年では画像処理ソフトウェアの発達により、MRI画像から自動セグメンテーション技術を用いて高精度かつ効率的に脳室容積を算出することが可能となっている。8

これにより、個別の臨床診断の補助だけでなく、大規模なコホート研究や臨床試験において疾患の進行度を評価するためのバイオマーカーとしての有用性も高まっている。9

参考文献・出典

  1. 脳の構造と機能: https://www.jns.gr.jp/about/brain/ ↩
  2. 脳神経外科疾患と画像診断: https://www.jsne.org/medical/diagnosis.html ↩
  3. 加齢と脳の形態変化について: https://www.mhlw.go.jp/content/000600000.pdf ↩
  4. 精神疾患における画像研究の動向: https://www.ncnp.go.jp/nimh/index.html ↩
  5. 特発性正常圧水頭症診療ガイドライン: https://www.jsnt.gr.jp/guideline/INPH_3.html ↩
  6. 認知症疾患診療ガイドライン: https://www.neurology-jp.org/guidelinem/dementia_2017.html ↩
  7. 精神神経学雑誌: https://journal.jspn.or.jp/ ↩
  8. 日本磁気共鳴医学会雑誌: https://www.jsrmm.jp/ ↩
  9. 日本医学放射線学会雑誌: https://www.radiology.or.jp/ ↩