HEALTH WORDS / 用語解説
基底核回路
Basal ganglia circuit
基底核回路とは、大脳皮質、基底核、視床を経由して再び大脳皮質へと戻る一連の神経回路網であり、運動の随意的な開始や調節、学習、報酬予測などの多様な高次脳機能において中心的な役割を果たす神経回路である。1
基底核を構成する主要な神経核には、線条体、淡蒼球、黒質、視床下核などが含まれる。1
大脳皮質の広範な領域から入力を受け取った回路は、主に線条体を入口として情報処理を開始する。1
情報処理の経路には、大脳皮質からの信号を興奮性に促進する直接路と、活動を抑制的に調整する間接路が存在し、これらの絶妙なバランスによって滑らかな運動制御が実現されている。2
直接路は、線条体から淡蒼球内節および黒質網様体へ直接投射する経路であり、運動を誘発・促進するアクセルとしての機能を担う。1
一方、間接路は、線条体から淡蒼球外節や視床下核を経由して出力核へ至る迂回路であり、不要な運動を抑制するブレーキとしての役割を果たしている。1
さらに、黒質緻密部から線条体へ投射するドパミン作動性神経系は、これら直接路と間接路の活動を修飾し、基底核回路全体の情報処理効率をダイナミックに変化させる。2
基底核回路の機能破綻は、多彩な神経疾患を引き起こすことが知られている。2
例えば、黒質緻密部のドパミン神経細胞が変性・脱落することでドパミンが枯渇し、間接路の活動過剰と直接路の活動低下が生じる結果、運動の減少や無動、振戦を主徴とするパーキンソン病が発症する。2
反対に、線条体の特定の神経細胞が障害される場合には、不随意な運動が現れるハンチントン病などの病態につながる。1
このように、基底核回路は単なる運動制御にとどまらず、報酬に基づく学習や習慣形成、さらには意欲や感情の制御といった精神機能の基盤としても極めて重要な神経回路網である。1