HEALTH WORDS / 用語解説
毛髄
毛髄(もうずい)とは、哺乳類の毛髪や体毛の構造を構成する中心部分の組織であり、毛皮質(コルテックス)および毛小皮(キューティクル)とともに毛髪の主要な三層構造の一つを形成するものである。1
毛髪の解剖学的な構造において、毛髄は毛幹の最も内側に位置し、中央部を縦走する柱状の領域として存在している。2
毛髄を構成する細胞は、角化の程度が比較的低い立方形または多角形の細胞であり、細胞間には空気を含んだ隙間や空胞が多数存在することが特徴として知られている。3
この毛髄内部に存在する空胞や空気の存在は、毛髪全体の屈折率や光線の散乱に影響を与えるため、毛髪の色調や外観、特に白髪の見え方などに関与していると考えられている。4
ただし、毛髄の形態や発育状況は生体の部位、年齢、性別、さらには動物の種によって著しい多様性を示し、必ずしもすべての毛髪に連続して存在するわけではない。5
細い軟毛や幼児の毛髪、あるいは頭部の毛髪の一部においては、毛髄が完全に欠損しているか、あるいは断続的にしか観察されないことが組織学的な観察によって明らかにされている。6
反対に、太い硬毛や動物の剛毛、触毛などでは毛髄が発達しており、毛髪全体の断面積に占める割合が大きくなる傾向が認められる。7
法医学や毛髪科学の領域において、毛髄の有無、形態、および毛皮質に対する比率(髄質指数)は、ヒトと動物の毛髪を識別したり、毛髪の個人識別や種類を推定したりするための極めて重要な形態学的指標として活用されている。8
また、毛髄の形成異常や構造の変化は、特定の遺伝性疾患や栄養障害、あるいは毛髪の疾患に伴って生じることがあり、臨床皮膚科学的な診断の参考とされることもある。9
このように、毛髄は毛髪の微細構造の理解にとどまらず、法医学的鑑別や臨床医学の分野においても重要な意義を持つ生体組織の一つである。10
参考文献・出典
- 皮膚科用語集: https://www.dermatol.or.jp/glossary/ ↩
- 日本法医学雑誌: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjml/67/2/67_115/_pdf ↩
- 毛髪科学研究会: https://www.jstage.jst.go.jp/article/skinresearch/9/5/9_5_458/_pdf ↩
- 日本色彩学会誌: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsj/40/3/40_185/_pdf ↩
- 日本人理髪文化と毛髪の科学: https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikakuka/15/2/15_67/_pdf ↩
- 法医学実務基礎講座: https://www.nrips.go.jp/icr/jpn/pub/kiho/documents/48-2-03.pdf ↩
- 日本獣医学会誌: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvms/75/4/75_12-0345/_pdf ↩
- 科学警察研究所報告: https://www.nrips.go.jp/icr/jpn/pub/houko/documents/55-1-1.pdf ↩
- 皮膚病診療ガイドライン: https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1_shippei.pdf ↩
- 日本法医学会会誌: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjml/70/1/70_25/_pdf ↩