HEALTH WORDS / 用語解説
液液相分離
Liquid-Liquid Phase Separation
液液相分離とは、均一な溶液が物理化学的な性質の違いにより、互いに混ざり合わない2つの異なる液相へと分離する現象のことである。1
生物学の分野においては、細胞内においてタンパク質や核酸などの生体高分子が特定の領域に濃縮され、膜を持たない細胞内小器官(オルガネラ)を形成するメカニズムとして近年非常に高い注目を集めている。1
従来、細胞内の構造物は脂質二重膜によって周囲から区画化されていると考えられてきたが、液液相分離によって形成される構造体は膜を持たないため「非膜構造オルガネラ」とも呼ばれる。2
代表的な非膜構造オルガネラとしては、核内にある核小体(ニュクレオラス)や、ストレス顆粒、Pボディなどが挙げられる。2
これらの構造体は、高分子同士の多価かつ弱く可逆的な相互作用、特にアミノ酸配列中の天然変性領域やRNAとの結合を介して駆動されることが多い。1
液液相分離を介したタンパク質の濃縮は、特定の化学反応の効率を飛躍的に高める反応場として機能するほか、遺伝子発現の調節やシグナル伝達の制御においても極めて重要な役割を担っている。2
一方で、この相分離の物理化学的なバランスが崩れることや、タンパク質の変異によって不可逆的な凝集体へと変化することが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患の発症や老化プロセスに関与していることも明らかにされつつある。1
このように、液液相分離は単なる物理化学的な現象にとどまらず、生命現象の本質的な理解や疾患のメカニズム解明、さらには新しい創薬ターゲットの探索において鍵となる概念として研究が進められている。2