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HEALTH WORDS / 用語解説

直接鼠径ヘルニア

直接鼠径ヘルニアとは、腹壁の筋層の脆弱性を原因として、腹膜がHesselbach三角と呼ばれる解剖学的な領域から直接体表側へと突出する病態である。1 鼠径ヘルニアは脱腸とも俗称され、鼠径部に生じるヘルニアの代表的な病型の一つであり、間接鼠径ヘルニアとともに主要な分類を構成している。2

解剖学的に直接鼠径ヘルニアの突出部位となるHesselbach三角は、腹壁下動脈、外側縁を構成する下腹壁動脈、内側縁を構成する腹直筋外縁、そして下縁を構成する鼠径靭帯によって囲まれた三角地帯である。3 この領域は構造的に腹壁の筋層や筋膜が他の部位と比較して薄く、加齢や慢性疾患に伴う組織の脆弱化が進行することによって、腹腔内の圧力に耐えきれなくなり腹膜や腸管などの内容物が脱出する素因となる。1

直接鼠径ヘルニアの主な臨床症状としては、立位時や腹圧をかけた際に鼠径部に現れる可復性の腫瘤や膨隆が挙げられる。2 初期の段階では、横たわるなどして腹圧を取り除くか手で圧迫することで腫瘤は腹腔内へと自然に還納されることが多いが、病態が進行すると還納が困難になることがある。3 間接鼠径ヘルニアが内鼠径輪という先天的な構造異常や解剖学的経路を介して発生することが多いのに対し、直接鼠径ヘルニアは多くの場合中高年以降の男性に好発し、加齢による腹壁組織の退行変性や虚弱が直接的な発症基盤として関与している。1

直接鼠径ヘルニアを含む鼠径ヘルニアの治療法については、自然治癒が期待できないため、根本的な治療としては外科的治療である手術が選択される。2 現代の外科手術においては、人工補綴材であるメッシュを用いて脆弱化したHesselbach三角を中心とする鼠径部の後壁を補強するメッシュ法やテンションフリー法が広く採用されている。3 これにより、術後の疼痛の軽減や再発率の低下が図られており、術式としては従来法による前方アプローチのほか、腹腔鏡下手術を用いた低侵襲治療も広く普及している。1

直接鼠径ヘルニアにおいて特に注意すべき合併症として、嵌頓がある。2 嵌頓とは、脱出した腸管や大網などの内容物がヘルニア門で締め付けられ、還納できなくなった状態を指す。3 この状態が放置されると、血流障害を引き起こして腸管壊死や腸閉塞などの重篤な合併症を招く危険性があり、緊急手術の適応となることがあるため、早期発見と適切な診断および治療が極めて重要である。1

参考文献・出典

  1. 日本外科学会: https://www.jsurg.or.jp/general/others_hernia.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
  2. 日本消化器外科学会: https://www.jsg.eds.ocn.ne.jp/citizen/kanja/shouka/hernia.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  3. 日本ヘルニア学会: https://www.j-hernia.jp/general/hernia_01.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4