HEALTH WORDS / 用語解説
脈絡叢癌
Choroid plexus carcinoma
脈絡叢癌とは、脳室内に存在する脈絡叢の上衣細胞から発生する、稀かつ悪性の脳腫瘍である。1 世界保健機関(WHO)の中枢神経系腫瘍分類において、悪性度を示すグレード3に位置づけられる悪性腫瘍である。2
本疾患は全ての脳腫瘍の中でも極めて稀な疾患であり、小児、特に2歳以下の乳幼児に発生しやすいという特徴を持つ。1 発生部位としては、側脳室の三角部が最も多く、頭蓋内圧亢進症状や水頭症を引き起こすことが多い。2
組織学的には、脈絡叢乳頭腫(グレード1)よりも高い細胞密度、核分裂像の増加、異型性、壊死、そして脳実質への浸潤傾向が認められる点が悪性度の判定基準となる。1 脳脊髄液を介した髄液腔播種をきたすこともあり、診断時や治療経過において脊髄を含めた中枢神経系全体の評価が重要となる。2
臨床症状としては、頭蓋内圧亢進に伴う嘔吐、頭痛、不機嫌、大泉門膨隆、また脳室の拡大や腫瘍による圧迫に起因する運動麻痺や痙攣発作などが現れる。1 画像検査としては頭部MRI検査が必須であり、造影剤によって強く均一あるいは不均一に造影効果を示す腫瘍として描出され、しばしば脳室の著明な拡大を伴う。2
治療戦略の基本は、可能な限りの外科手術による腫瘍摘出であるが、脈絡叢は血管が非常に豊富であるため、手術時の大量出血がリスクとなる。1 そのため、術前化学療法を用いて腫瘍を縮小させ、出血リスクを軽減させる試みが行われることもある。2
手術後は、年齢や悪性度、播種の有無に応じて化学療法や放射線療法が組み合わされるが、特に乳幼児期の小児に対しては放射線治療のもたらす神経認知機能への影響を考慮して治療方針が慎重に検討される。1 近年の分子生物学的な研究により、TP53遺伝子変異が関与しているケースが多いことなどが明らかにされており、予後や病態解明に向けたアプローチが進められている。2