HEALTH WORDS / 用語解説
脈絡乳頭腫
Choroid plexus papilloma
脈絡乳頭腫とは、脳室内に存在する脈絡叢から発生する稀な良性腫瘍(WHO分類グレードI)である。1
本疾患は全ての脳腫瘍のおよそ0.5%から2%程度を占めるに過ぎない極めて稀な腫瘍であるが、小児期、特に1歳未満の乳幼児においては頭蓋内腫瘍全体の割合の中で比較的多く見られるという特徴がある。2
発生部位としては、側脳室の三角部が小児において最も多く見られる好発部位であり、一方の成人においては第4脳室に発生する傾向がやや強いとされている。3
組織学的な特徴として、脈絡乳頭腫は正常な脈絡叢の構造と極めてよく似た乳頭状の増殖組織を示し、単層の立方上皮あるいは円柱上皮が結合組織性の間質を取り囲むような形態をとり、悪性腫瘍特異的な浸潤傾向は乏しい。4
臨床的な主な症状としては、腫瘍自体が脳脊髄液を過剰に産生することや、腫瘍による脳脊髄液の循環経路の閉塞などを原因として、水頭症を併発することに伴う頭蓋内圧亢進症状が挙げられる。5
頭蓋内圧亢進に伴って、頭痛、嘔吐、うっ血乳頭、乳幼児における大泉門の膨隆や頭位の急激な拡大などが引き起こされるため、画像診断による早期の発見が極めて重要となる。6
画像診断において、頭部CT検査では高吸収な腫塊として描出され、しばしば石灰化や内部の不均一な造影効果を伴うことが多く、MRI検査ではT1強調画像で等信号ないし低信号、T2強調画像で高信号を示し、ガドリニウムによる造影剤を用いた検査では非常に強い造影効果が認められる。7
治療の第一選択としては、外科的切除術による腫瘍の完全摘出が基本方針となり、良性腫瘍であるため完全切除が行われた場合の予後は比較的良好であり、長期的な生存率も高い数値を示す。8
ただし、手術の際には腫瘍自体の血流が非常に豊富であるため、術中の大量出血に十分に注意を払う必要があり、水頭症が持続する場合にはシャント術などの追加治療が必要となることもある。9
なお、組織学的にさらに細胞の密度が高く核分裂像が頻繁に見られるなど悪性の所見を伴うものは、非定型脈絡乳頭腫(グレードII)や脈絡叢癌(グレードIII)として厳密に区別され、治療方針や予後の予測も異なるため詳細な病理診断が不可欠である。10
参考文献・出典
- 脳腫瘍病理診断アトラス: https://www.jsnp.org/atlas/pdf/07-01.pdf ↩
- 小児脳腫瘍の診断と治療: https://www.jns.gr.jp/public/children_brain_tumor/ ↩
- 脳神経外科疾患国際基準: https://www.ncgm.go.jp/iryou/senmon/neurosurgery/tumors.html ↩
- 腫瘍病理学データベース: https://pathology.or.jp/aji/database/choroid_plexus_papilloma.html ↩
- 厚生労働省難治性疾患克服研究事業班報告: https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?bunkenCd=201210034A ↩
- 日本小児科学会専門医テキスト: https://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=105 ↩
- 日本脳神経外科学会データベース: https://jns.umin.ac.jp/guideline/guideline.html ↩
- 日本脳腫瘍学会ガイドライン: https://www.jsnt.gr.jp/guideline/index.html ↩
- 日本小児神経外科学会誌: https://www.jssns.org/journal/pdf/vol35_2_112.pdf ↩
- 脳腫瘍取扱い規約: https://www.jsnt.gr.jp/about/kiyaku.html ↩