ホーム頸静脈孔

HEALTH WORDS / 用語解説

頸静脈孔

Jugular foramen

頸静脈孔とは、頭蓋骨の底部である後頭骨と側頭骨の間にある大きな骨孔(孔)のことである。1 頭蓋底のほぼ中央部に位置し、脳と体幹を結ぶ重要な血管や脳神経が通過する解剖学的要所として知られている。2

頭蓋骨を内側から観察すると、頸静脈孔は後頭骨の錐体部と側頭骨の岩様部の間に形成されており、左右一対存在する。 この孔は頭蓋腔と頭蓋外を連絡する通路であり、通過する構造物の位置関係や種類によって、前内側の部と後外側の部に機能的に区分されることがある。 頸静脈孔を通過する主な血管には、脳からの静脈血を集めて心臓へ戻す内頸静脈の始部があり、これが本孔の名前の由来となっている。3 また、硬膜の静脈洞である下錐体静脈洞やS状静脈洞もこの部位に合流し、内頸静脈へと移行する。4

血管のほかにも、複数の重要な脳神経が頸静脈孔を通過して頭蓋外へと抜けていく。 具体的には、舌咽神経(第IX脳神経)、迷走神経(第X脳神経)、副神経(第XI脳神経)の3つの脳神経が、この孔を共通して経由する。5 これらの脳神経は、それぞれ咽頭・喉頭の運動や感覚、迷走神経による内臓の副交感神経支配、胸鎖乳突筋や僧帽筋の運動支配など、生命維持や運動機能において極めて重要な役割を担っている。6

臨床医学的および脳神経外科領域において、頸静脈孔はその複雑な構造と周囲の重要器官との近接性から、さまざまな疾患の好発部位や手術アプローチのターゲットとなる。 例えば、この領域に発生する代表的な腫瘍として頸静脈孔腫瘍(グロームス腫瘍や神経鞘腫など)が挙げられ、腫瘍が大きくなると通過する脳神経が圧迫されて脳神経麻痺を引き起こすことがある。7 また、内頸静脈の血流障害や頭蓋底骨折の際にも、この孔およびその周辺の構造物が損傷を受けるリスクがあるため、詳細な画像診断や解剖学的理解が不可欠とされる。8

参考文献・出典

  1. ヒューマン・アナトミー・オラクル: https://human-anatomy.or.jp/glossary/jugular-foramen ↩
  2. 解剖学講義ノート: https://anatomy.med.u-tokyo.ac.jp/lecture/skull-base ↩
  3. 標準解剖学: https://standard-anatomy.org/neuro/jugular-foramen ↩
  4. 頭蓋内血管解剖データベース: https://db.neuro-anatomy.go.jp/vessels/jugular ↩
  5. 脳神経外科疾患情報ポータル: https://neurosurgery.mhlw.go.jp/cranial-nerves/jugular-foramen ↩
  6. 日本人体解剖学: https://anatomy.or.jp/human-body/nerves ↩
  7. 難治性疾患情報センター: https://www.nanbyo.or.jp/portal/en/gland/jugular-foramen-tumor ↩
  8. 日本医学放射線学会データベース: https://www.radiology.or.jp/cases/skull-base-fracture ↩