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HEALTH WORDS / 用語解説

S状静脈洞

Sigmoid sinus

S状静脈洞とは、硬膜の静脈洞の一つであり、横静脈洞から内頸静脈へと血液を中継する重要な静脈の経路である。解剖学的には左右一対存在し、頭蓋骨の後頭骨、側頭骨、および蝶形骨の縁に沿ってS字状の弯曲を描きながら下方へ走行している。脳組織や硬膜、頭蓋骨からの静脈血を集め、頭蓋底にある頸静脈孔を経て内頸静脈へと注ぐ構造をもっている。解剖学的変異や周囲の骨構造との位置関係が多岐にわたるため、脳神経外科手術や耳鼻咽喉科領域の手術において極めて重要な血管の一つとして知られている。1

S状静脈洞は、小脳テントの付着部に沿って水平方向に走る横静脈洞の直接的な連続として起始する。側頭骨の乳突部の内面を下方および前方へ向かってS字状に蛇行しながら進み、最終的に頸静脈孔の部位で上球を形成して内頸静脈へと移行する。この走行の途中で、上錐体静脈洞などの他の静脈洞からの血流を受け入れるとともに、導出静脈などを介して頭蓋外の静脈網とも交通している。硬膜の2層の間に挟まれる形で存在するため、通常の静脈とは異なり管壁が拡張して萎縮しにくい構造をしている。2

臨床医学および画像診断の分野において、S状静脈洞は様々な疾患の評価対象となる。代表的なものとして、静脈洞血栓症があげられ、感染症や血液凝固異常などを背景として血栓が形成されると、頭蓋内圧亢進症状や頭痛、神経症状を引き起こすことがある。また、側頭骨内における乳突蜂巣炎などの炎症性疾患が周囲の硬膜を介してS状静脈洞に波及し、化膿性血栓性静脈洞炎を合併することもある。さらに、硬膜動静脈瘻の好発部位の一つとしても知られており、脳血管障害の原因となる異常な短絡血流が形成されることがある。3

脳神経外科領域や耳鼻咽喉科領域の外科手術、特に聴神経腫瘍の摘出術や側頭骨の手術、頭蓋底外科アプローチにおいては、S状静脈洞の位置と走行を術前に正確に把握することが必須である。磁気共鳴画像法(MRI)や磁気共鳴血管撮影(MRA)、CT血管撮影(CTA)などの画像診断技術を用いて、左右の血管の大きさの非対称性や骨による被覆の程度、優位側などを詳細に評価した上で手術計画が立案される。手術中にはこの静脈洞を損傷しないよう細心の注意が払われ、万が一の損傷時には確実な止血操作が求められるなど、脳外科手技の安全性確保において極めて重要な解剖学的指標となっている。4

参考文献・出典

  1. 解剖学ウェブ: https://www.Anatomical-Web.com/ja/archives/8233 ↩
  2. 日本人体解剖学(上巻): https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524227914/ ↩
  3. 日本大百科全書(ニッポニカ): https://kotobank.jp/word/静脈洞-523199 ↩
  4. 南山堂 医学大辞典: https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524228492/ ↩