HEALTH WORDS / 用語解説
シーズ化合物
Lead compound
シーズ化合物とは、新たな医薬品の開発において、目的とする薬理作用を示し、創薬の出発点となる化合物のことである。1
現代の創薬科学および製薬工業において、新しい医薬品を市場に送り出すためには、まず多様な化学物質の中から有望な出発点を見つけ出す必要がある。2
シーズ化合物は、その化学構造を基盤として、より高い薬効を示し、かつ副作用や毒性が少なく、体内で適切な動態を示す医薬品候補物質へと構造最適化するための土台となる。3
このシーズ化合物を探索・取得するプロセスは、創薬研究の初期段階において極めて重要な位置を占めている。4
シーズ化合物の発見には様々な手法が用いられており、伝統的な天然物化学の分野では、植物、海洋生物、微生物などの天然資源から抽出された成分の中から、特定の生物活性を持つものが探索されてきた。5
また、近年の有機合成化学や分子生物学の進展に伴い、膨大な数の化合物を迅速に合成・収集し、特定の標的分子に対する薬理作用を自動で網羅的に評価するハイスループットスクリーニングが広く導入されている。6
さらに、コンピュータ技術を利用したインシリコ創薬や分子モデリングの手法が発展したことにより、標的タンパク質の立体構造データに基づいて、結合親和性の高いシーズ化合物を効率的に予測・設計することが可能となっている。7
このようにして見出されたシーズ化合物は、そのままでは代謝安定性や溶解度、あるいは生体利用効率などの面で医薬品としての要件を十分に満たしていないことが多いため、薬物動態学や薬理学の知見に基づいた緻密な化学修飾が施される。8
構造最適化の過程では、標的受容体に対する親和性や選択性を高めると同時に、安全性試験や毒性試験を通じて臨床試験への移行に適した優れた薬物候補化合物へと昇華させていく。9
シーズ化合物の質と多様性は、その後のパイプライン全体ひいては新しい治療薬の創出効率を大きく左右するため、アカデミアにおける基礎研究から製薬企業の研究開発部門に至るまで、極めて広範な分野で活発な研究が続けられている。10
参考文献・出典
- 独立行政法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立医薬品食品衛生研究所: https://www.nihs.go.jp/ICHS/smp/smp-j.html ↩
- 独立行政法人科学技術振興機構: https://www.jst.go.jp/tt/JSP/seika/h27/seika_H27_10.html ↩
- 経済産業省: https://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/bio/pdf/h27_houkoku_03.pdf ↩
- 独立行政法人科学技術振興機構: https://www.jst.go.jp/jst/index.html ↩
- 独立行政法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立医薬品食品衛生研究所: https://www.nihs.go.jp/db/ ↩
- 国立研究開発法人日本医療研究開発機構: https://www.amed.go.jp/ ↩
- 国立研究開発法人理化学研究所: https://www.riken.jp/ ↩
- 独立行政法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立医薬品食品衛生研究所: https://www.nihs.go.jp/kanren/ ↩
- 経済産業省: https://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/bio/ ↩
- 国立研究開発法人日本医療研究開発機構: https://www.amed.go.jp/aboutus/governance/index.html ↩