HEALTH WORDS / 用語解説
ストレプトミセス・ヒグロスコピクス
ストレプトミセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)とは、放線菌の一種であり、土壌中に広く生息しているグラム陽性菌の細菌である。1
本種は、多様な生理活性物質を産生する能力を持つことで知られており、医学および薬学の分野において極めて重要な微生物の一つとして位置づけられている。2
ストレプトミセス・ヒグロスコピクスが産生する代謝産物の代表例として、ラパマイシン(シロリムス)が挙げられる。3
ラパマイシンは、強力な免疫抑制作用を持つマクロライド系化合物であり、臓器移植における拒絶反応の抑制や、免疫抑制剤としての臨床応用がなされてきた。4
さらに、ラパマイシンは細胞内のmTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)を阻害する作用を持つことが解明されており、細胞増殖やシグナル伝達、オートファジーといった基礎生物学的メカニズムの研究においても重要な研究試薬として利用されている。5
mTOR阻害作用に基づく抗腫瘍効果も期待されており、特定の悪性腫瘍に対する治療薬のリード化合物としても研究が進められている。3
加えて、本種あるいはその近縁株からは、抗生物質であるハイグロマイシンBなども見出されており、遺伝子工学の分野において選択マーカーとしても活用されてきた歴史がある。1
このように、ストレプトミセス・ヒグロスコピクスは、自然界における土壌微生物としての生態学的役割だけでなく、創薬科学や分子生物学の発展に多大な貢献を果たしている有用な生物資源である。2
参考文献・出典
- NITE Biological Resource Center: https://www.nite.go.jp/nbrc/catalogue/NBRC100000/pdf/NBRC_103445.pdf ↩1 ↩2
- J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbbt/84/6/84_6_454/_pdf ↩1 ↩2
- J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/45/2/45_2_150/_pdf ↩1 ↩2
- 医薬品医療機器総合機構: https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultPDF/400233_39990C1037_1_04 ↩
- J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/52/6/52_300/_pdf ↩