HEALTH WORDS / 用語解説
セクレターゼ
Secretase
セクレターゼとは、膜タンパク質の細胞外ドメインを切断して細胞外へと遊離させるプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)の総称である。1 アルツハイマー病の発症メカニズムやアミロイドβの生成に関与する酵素群として特に広く知られている。2
セクレターゼは、その切断様式や関与するタンパク質の種類によっていくつかの種類に大別される。 代表的なものとして、アミロイド前駆体タンパク質(APP)を切断するαセクレターゼ、βセクレターゼ(BACE1など)、γセクレターゼなどが挙げられる。3
アルツハイマー病の病態生理において、セクレターゼによるアミロイド前駆体タンパク質の代謝経路は極めて重要な役割を持っている。4 通常、αセクレターゼがアミロイド前駆体タンパク質を切断する経路では、神経毒性を持つアミロイドβの産生が回避される。5 一方で、βセクレターゼとγセクレターゼが順次作用する経路では、アミロイドβが切り出され、これが脳内に蓄積することで老人斑を形成し、神経細胞の変性やアポトーシスを引き起こすと考えられている。6
このような背景から、アルツハイマー病の治療薬および予防薬の開発ターゲットとして、セクレターゼの活性を阻害する薬剤の研究が国内外で進められてきた。7 特にβセクレターゼ阻害薬(BACE阻害薬)などは、アミロイドβの産生を上流で断つアプローチとして期待されたが、臨床試験において認知機能の悪化や副作用などの課題が指摘され、現在も安全かつ有効な創薬に向けた基礎・臨床研究が続けられている。8
また、セクレターゼはアルツハイマー病関連にとどまらず、Notchシグナル伝達系をはじめとする多様な細胞間情報伝達や膜受容体のプロセシングにも深く関与している。9 例えばγセクレターゼは膜タンパク質の膜内切断(定常状態での膜内分解)を行う特殊な複合体酵素であり、癌や免疫系の疾患など様々な生体防御・病態メカニズムとの関連性が解析されている。10
参考文献・出典
- 生命科学Dデータベース: https://biosciencedbc.jp/ ↩
- 理化学研究所: https://www.riken.jp/ ↩
- 国立精神・神経医療研究センター: https://www.ncnp.go.jp/ ↩
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/ ↩
- 科学技術振興機構: https://www.jst.go.jp/ ↩
- 日本薬学会: https://www.pharm.or.jp/ ↩
- 日本医学会: https://www.jams.or.jp/ ↩
- 日本製薬工業協会: https://www.jpma.or.jp/ ↩
- 日本生化学会: https://www.jbsoc.or.jp/ ↩
- 日本癌学会: https://www.jca.gr.jp/ ↩