HEALTH WORDS / 用語解説
タンパク質透過チャネル
Protein-translocating channel
タンパク質透過チャネルとは、生体膜を介してタンパク質が移動する際に通過する膜貫通領域を形成するタンパク質複合体、またはその小胞体膜やミトコンドリア膜などに存在する水溶性の小路のことである。1 細胞内で合成された前駆体タンパク質や特定の分泌タンパク質が、小胞体やミトコンドリアなどのオルガネラ膜を横切って輸送されるためには、通常はエネルギー消費を伴いつつ、膜に埋め込まれた専用の透過装置を経由する必要がある。1 このようなチャネルは、標的となるタンパク質のアミノ酸配列に含まれる特定のシグナル配列や移行シグナルを認識し、膜を隔てた区画間での正確なタンパク質輸送を仲介する中心的な役割を担っている。1
真核生物の小胞体において、翻訳中のポリペプチド鎖が膜を通過する共翻訳的輸送や、翻訳終了後の翻訳後輸送に関与する代表的なタンパク質透過チャネルとして、Sec61複合体が広く知られている。2 Sec61複合体はSec61α、Sec61β、Sec61γの3つのサブユニットから構成されるヘテロ三量体であり、小胞体膜上に水分子が満たされた水系孔を形成することによって、親水性のアミノ酸配列を持つ polypeptide chain の膜透過を物理的に可能にしている。2 このチャネルは、側壁に側方ゲートと呼ばれる構造的な開口部を備えており、透過中のタンパク質が持つ疎水性の膜貫通セグメントを脂質二重層の内部へと直接排出することで、膜タンパク質の適切な膜挿入を誘導する機能も併せ持っている。2
また、ミトコンドリアや葉緑体といった細胞内小器官においても、外膜および内膜を特異的に通過させるための異なるタンパク質透過チャネルが存在している。1 例えば、ミトコンドリアの外膜にはTOM複合体(Translocase of the outer mitochondrial membrane)が外膜透過チャネルとして機能し、内膜にはTIM複合体(Translocase of the inner mitochondrial membrane)が内膜透過チャネルとして連携して働くことで、細胞質側で合成された核遺伝子コードのミトコンドリアタンパク質を適切なマトリックス内や膜間スペースへと輸送している。1 これらのチャネルはATP hydrolysisや膜電位を駆動力として利用し、構造変化を伴いながら高分子であるタンパク質を効率的かつ選択的に透過させる。1