HEALTH WORDS / 用語解説
テルロメア
Telomere
テルロメアとは、真核生物の染色体の末端部に位置する特殊なDNA・タンパク質複合体であり、染色体のゲノム情報を保護する極めて重要な役割を担っている。1
人間のDNAを含む多くの真核生物の染色体は線状構造をしており、細胞分裂に伴ってDNA複製が行われる際、その酵素の性質上、DNA分子の末端部分を完全に複製することができないという根本的な問題(末端複製問題)を抱えている。2
もし染色体の末端に重要な遺伝子情報が存在していれば、細胞分裂のたびに遺伝子情報が欠損し、細胞は正常に機能しなくなってしまう。2
そのため、染色体の最末端には意味のある遺伝子コードを持たない反復配列(ヒトの場合は「TTAGGG」の塩基配列が数千回繰り返される構造)からなるテルロメアが存在し、いわば「緩衝材」として機能することで、細胞分裂の際に末端が削られても内部の重要なゲノム情報が失われないように保護している。2
細胞分裂が繰り返されるにつれて、このテルロメアのDNA鎖は少しずつ短くなっていく。1
テルロメアの長さが一定の限界(ヘイフリック限界)を超えて極端に短くなると、細胞はDNA損傷応答を引き起こし、細胞周期の停止や細胞死(アポトーシス)、あるいは不可逆的な細胞老化へと誘導される。2
この仕組みは、個体の老化や寿命の決定、さらには無限の増殖能を獲得して腫瘍化するがん細胞の抑制において中心的な役割を果たしていると考えられている。1
一方で、生殖細胞や幹細胞、あるいは多くのがん細胞においては、失われたテルロメアのDNA配列を特異的に補充・伸長させる酵素であるテロメラーゼが活性化している。2
テロメラーゼは逆転写酵素の一種であり、自ら保持するRNAを鋳型として用いて染色体末端の反復配列を合成・付加することで、テルロメアの短縮を防ぎ、細胞の不死化に寄与している。2
このように、テルロメアは分子生物学、細胞生物学、老化研究、腫瘍学などの幅広い分野において、遺伝子安定性の維持や細胞運命の制御を理解する上で極めて重要な生体分子機構として研究が進められている。1