ホームノルウェー疥癬

HEALTH WORDS / 用語解説

ノルウェー疥癬

Norwegian scabies

ノルウェー疥癬とは、疥癬虫であるヒゼンダニ(*Sarcoptes scabiei*) の寄生によって引き起こされる疥癬の極めて重症化した病型であり、別名で角化型疥癬とも呼ばれる。1

通常の疥癬と比較して、皮膚に寄生するヒゼンダニの数が何百万匹という途方もない規模に達する点が最大の特徴である。2

1848年にノルウェーのダニエルセン(Danielssen)らによって、ハンセン病患者に合併する特異な皮膚症状として初めて詳細に記述されたことから「ノルウェー疥癬」の名称が定着した。2

発症の背景には、宿主側の免疫不全や免疫抑制状態が深く関与している。1 具体的には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症や後天性免疫不全症候群(AIDS)、悪性腫瘍に対する化学療法の施行中、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制剤の長期投与を受けている患者、あるいは高齢者における著しい体力低下や栄養状態不良、知覚障害などが主な宿主側要因となる。2

通常の疥癬で見られるような激しいそう痒感(かゆみ)は、免疫反応が低下しているために軽度であるか、あるいは全く感じられないことも少なくない。2

臨床症状としては、全身の皮膚に厚い角質増殖(角質層の過剰肥厚)が生じ、灰白色から黄褐色を呈する大型の落屑性皮疹や痂皮(かさぶた)が形成される。1 これらの痂皮は、頭部、顔面、耳介、手足の爪の周囲といった、通常のヒゼンダニでは好発しない部位にも広範囲に形成されることがある。2 特に爪に寄生した場合、爪甲の肥厚や変形、混濁が引き起こされ、治療が極めて困難になる爪疥癬を合併する原因となる。2

診断にあたっては、厚く形成された痂皮の削片を顕微鏡で観察し、大量のヒゼンダニ、虫卵、排泄物を確認することによって確定される。1

感染力は通常の疥癬と比較して圧倒的に高く、患者の剥がれ落ちた皮屑(フケや垢)や痂皮の中には多数の生きたダニが含まれている。2 そのため、直接的な皮膚接触だけでなく、衣服、寝具、リネン類、周囲の環境塵埃を介した間接接触によっても容易に周囲の人々へ感染が拡大する。1 医療機関や高齢者福祉施設などの集団生活施設において院内感染や施設内感染のアウトブレイクを引き起こす重大な原因疾患となる。2

治療においては、外用薬の単独使用では肥厚した角質層の深部にまで有効成分が十分に浸透しないため、通常型よりも難治性である。3 このため、内服薬であるイベルメクチンの投与と、抗1%フェノトリンパウダーやクロタミトンクリーム、硫黄軟膏などの外用薬の塗布を併用することが基本となる。2 さらに、物理的に厚い痂皮を軟化させて除去する処置も並行

参考文献・出典

  1. 厚生労働省 感染症法に基づく医師及び獣医師の届出に関する手引: https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/dl/shishin_04031-1.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
  2. 国立感染症研究所 IASR 2005年12月配付号: https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2330-iasr/2972-kj3210.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
  3. 国立感染症研究所 IASR 2005年12月配付号: https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2330-kj3210.html ↩