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HEALTH WORDS / 用語解説

プロテオーム

Proteome

プロテオームとは、ゲノム(遺伝情報全体)に対応する造語であり、ある生物種、組織、細胞、あるいはオルガネラによってある特定の時点や条件下で発現しているタンパク質の総体を指す。1

「プロテオーム(Proteome)」という名称は、「タンパク質(Protein)」と「ゲノム(Genome)」を組み合わせたかばん語であり、1994年にイタリアの科学者マーク・ウィルキンス(Marc Wilkins)らによって提唱された。2

ゲノム情報が生物の個体内で基本的に一定不変であるのに対し、プロテオームは時間的・空間的に常に変動するという大きな特徴を持っている。

生物の細胞内では、環境変化、ストレス、分化の段階、疾患の発生などの多様な内的・外的な要因に応じて、転写や翻訳のレベル、さらには翻訳後修飾(リン酸化や糖鎖付加など)を受けながら、発現するタンパク質の種類や量がダイナミックに変化する。

そのため、同一のゲノムを持つ個体であっても、組織や細胞の種類によって、あるいは同じ細胞であってもその時々の状態によってプロテオームの構成は大きく異なることとなる。

このプロテオームを網羅的に解析し、その構造や機能、相互作用、動態を明らかにしようとする学問領域や研究アプローチは「プロテオミクス(Proteomics)」と呼ばれる。1

ゲノム解析手法の発展に伴い、多くの生物でDNAの塩基配列が解読されてきたが、遺伝子の配列が分かっても、そこから実際に作られるタンパク質がどのような働きをしているのか、あるいはどのように細胞内で機能しているのかを直接知ることはできない。

タンパク質は生体内の実際の化学反応を触媒し、細胞構造を維持し、シグナル伝達を担う実体であるため、プロテオーム解析は生命現象の本質を理解する上で不可欠な手法となっている。

現代のプロテオミクス研究においては、主に質量分析計(Mass Spectrometer)を用いた高精度なタンパク質同定および定量解析技術が中心的な役割を担っている。

2次元電気泳動法や液体クロマトグラフィー(LC)などの分離技術と質量分析を組み合わせることで、複雑な生体試料中に微量に含まれる数千ものタンパク質を同時に検出し、網羅的なプロファイルを得ることが可能となっている。

また、疾患特異的なプロテオームの変化を網羅的に解析することは、癌などの様々な病態メカニズムの解明や、新規のバイオマーカーの探索、さらには個別化医療(オーダーメイド医療)の発展に向けて極めて重要な意義を持っている。

参考文献・出典

  1. NIBIOHN 医薬基盤・健康・栄養研究所: https://www.nibiohn.go.jp/eiken/chosa/hakkaku/vol153.html ↩1 ↩2
  2. J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/44/2/44_2_076/_pdf ↩