ホームラインケ間隙

HEALTH WORDS / 用語解説

ラインケ間隙

Reinke's space

ラインケ間隙とは、ヒトの声帯における固有層の表層にあたる、上皮と声帯靭帯の間に存在する間隙(潜在腔)のことである。1 ドイツの解剖学者であるフリードリヒ・ラインケ(Friedrich Reinke)によって1895年に発見および命名された。2

声帯はいくつかの層構造から成り立っており、最外層の粘膜上皮、固有層(表層・中層・深層)、そして最深部の声帯筋によって構成されている。1 このうちラインケ間隙に相当する部分は固有層表層であり、エラスチン繊維やコラーゲン繊維などの線維成分が少なく、少数の線維芽細胞とヒアルロン酸などを多く含む膠様液(間質液)に富んだ柔軟な組織となっている。2

この解剖学的特徴により、声帯が発声時に呼気流を受けて波状に振動する「粘膜波動」を生み出す上で極めて重要な役割を果たしている。1 もしこの間隙に炎症や浮腫が生じると、声帯の柔軟性や質量が変化し、音声障害を引き起こす原因となる。2

ラインケ間隙に関連する代表的な疾患として、ラインケ浮腫(Reinke's edema)が挙げられる。2 これは喫煙、音声の乱用(大声や過度な発声)、胃食道逆流症などが主な原因となり、ラインケ間隙内に液体(漿液や粘液)が異常に貯留して腫脹をきたす良性病変である。2

臨床的には、中高年の喫煙者、特に女性に多く発症することが知られており、主訴として低くこもったような声の粗造化(嗄声)が認められる。2 症状が軽度な場合は禁煙や保存的治療(音声治療など)が行われるが、改善しない場合や気道狭窄の危険がある場合には、外科的治療として顕微鏡下で粘膜を切開し、貯留液を吸引・除去する手術が行われる。2

参考文献・出典

  1. Anatomical and histological structure of the vocal folds: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka1899/108/5/108_5_481/_article/-char/ja/ ↩1 ↩2 ↩3
  2. Reinke's edema: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK539855/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7