ホーム声帯ヒダ

HEALTH WORDS / 用語解説

声帯ヒダ

Vocal fold

声帯ヒダとは、喉頭の内部に左右一対として存在する粘膜のヒダであり、ヒトの発声や気道の保護において中心的な役割を果たす組織である。1

解剖学的には、甲状軟骨の後面から披裂軟骨の声突起にかけて水平に張る構造をしており、その内部には声帯筋や弾性円錐などが含まれている。2

喉頭腔を左右に分けるように突出しており、声帯ヒダに挟まれた隙間は声門と呼ばれる。3

発声のメカニズムにおいて声帯ヒダは極めて重要な器官であり、肺から送り出された呼気が気管を通って声帯ヒダを通過する際、適度に緊張・接近した左右の声帯ヒダが空気圧によって周期的な振動を起こす。4

この振動によって音声の原波長が形成され、さらに咽頭、口腔、鼻腔などの共鳴腔を通ることで、人間特有の言語音や歌声へと昇華される。5

また、発声時以外における声帯ヒダのもう一つの重要な生理的機能として、呼吸時の気道確保や、嚥下時における異物の下気道への侵入を防ぐ誤嚥防止のバルブとしての働きが挙げられる。6

ものを飲み込む際や、腹圧をかける際には、両側の声帯ヒダが強く内転して声門を完全に閉鎖し、胸腔内圧を保持する役割も果たしている。7

声帯ヒダの粘膜表層は重層扁平上皮によって覆われており、その直下には[[Reinke間隙(ラインケ間隙)]]と呼ばれる疎性結合組織が存在する特異な層構造を持っている。8

このReinke間隙の存在により、声帯ヒダの粘膜上皮とその深層にある声帯筋が滑走しやすくなり、効率的で美しい波動運動が可能となっている。9

しかしながら、この微細な構造ゆえに、声帯ヒダは過度な音声使用や喫煙、逆流性食道炎などの様々な物理的刺激や病態によって容易に障害を受けやすい。10

代表的な疾患としては、声帯ポリープ、声帯結節、ラインケ浮腫、ポリープ様声帯などがあり、これらは声帯ヒダの振動障害を引き起こし、持続的な声音障害や嗄声(しわがれ声)の原因となる。11

さらに、加齢に伴う声帯ヒダの萎縮や筋力低下は、老健領域や高齢者における声の衰えや誤嚥性肺炎のリスク増加にも深く関与しているため、耳鼻咽喉科領域における主要な治療およびリハビリテーションの対象となっている。12

参考文献・出典

  1. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会: https://www.jslah.or.jp/general/glossary/a.html ↩
  2. 慶應義塾大学医学部 尾瀬あゆみほか: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/117/5/117_609/_pdf ↩
  3. 解剖学ウェブ: https://www.AnatomiaWeb.com/p1431/ ↩
  4. 日本音声言語医学会: https://www.jslsh.or.jp/about/voice.html ↩
  5. 国語研究所 音声研究グループ: https://www.ninjal.ac.jp/publication/papers/bulletin/05/05-03.pdf ↩
  6. 厚生労働省 難治性疾患克服研究事業 喉頭疾患に関する調査研究班: https://www.nanbyou.or.jp/entry/4522 ↩
  7. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会: https://www.jsdr.or.jp/about/glossary/ ↩
  8. 日本気管食道科学会: https://www.jhts.gr.jp/guideline/pdf/kikanshokudo_71_3.pdf ↩
  9. 日本音声言語医学会 喉頭科学会: https://www.jslsh.or.jp/journal/pdf/vol58_no2_p120.pdf ↩
  10. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 咽頭・喉頭疾患: https://www.jslah.or.jp/citizen/disease/06.html ↩
  11. 日本医師会 健康な生活のための医学講座: https://www.med.or.jp/forest/health/qa/07.html ↩
  12. 国立長寿医療研究センター: https://www.ncgg.go.jp/hospital/guide/sintry/otolaryngology.html ↩