HEALTH WORDS / 用語解説
二本鎖RNAウイルス
Double-stranded RNA virus
二本鎖RNAウイルスとは、ゲノムとして二本鎖RNAを持つウイルスの総称であり、 Baltimore分類 におけるグループ3に分類される微生物である。1 2
多くのRNAウイルスが一本鎖のゲノムを有するのに対し、二本鎖RNAウイルスはプラス鎖とマイナス鎖の2本のRNAが対をなした二重螺旋構造を遺伝物質として保持している点が大きな特徴である。3 4
この群に属するウイルスのカプシドは、一般に正二十面体などの対称性を持つ頑健な構造をしており、過酷な環境下でも遺伝情報を安定して保護する役割を果たしている。4 1
代表的な科としては、レオウイルス科(Reoviridae)やビルナビウイルス科(Birnaviridae)などが挙げられ、これらはヒトや動物、植物、昆虫、さらには菌類に至るまで多様な宿主に感染することが知られている。3 2
例えば、レオウイルス科に属するロタウイルスは、乳幼児における急性胃腸炎の主要な病原体として医学的に極めて重要な臨床的意義を持っている。2 1
二本鎖RNAウイルスの生活環および複製機構においては、宿主細胞の細胞質内において、ウイルス自身がコードするRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)が重要な役割を担う。3 4
宿主の細胞内に侵入したウイルス粒子は、完全には脱外殻しないか、あるいはカプシド内部に酵素を保持したまま転写と複製を行うことで、宿主の自然免疫機構であるインターフェロン応答などの宿主応答を回避する巧妙な分子機構を備えている。2 3
また、このプロセスにおいて、マイナス鎖を鋳型として新たなプラス鎖RNAが合成され、これがmRNAとして翻訳に供されるとともに、次世代ウイルス粒子のゲノムとしてのパッケージングが行われる。1 4
二本鎖RNA自体は、脊椎動物の細胞においてToll様受容体(TLR3)やRIG-I受容体などのパターン認識受容体によって強力な異物として認識されるため、宿主とウイルスの間には複雑な免疫回避と生体防御の共進化の歴史が存在する。3 2
近年の分子生物学およびメタゲノム解析の発展に伴い、海洋環境や土壌などの自然界からこれまで知られていなかった新規の二本鎖RNAウイルスが次々と発見されており、ウイルス進化の系統樹や生態系における微生物生態学的役割の解明に向けた研究が現在も精力的に進められている。4 1