HEALTH WORDS / 用語解説
初期プロモーター
Initial promoter / Early promoter
初期プロモーターとは、ウイルスのゲノムまたは宿主細胞の遺伝子において、感染後または特定の細胞周期の初期段階において最初期あるいは初期に転写を開始させる領域のことである。1
分子生物学やウイルス学の分野において、主としてDNAウイルス(例えばアデノウイルスやシミアンウイルス40(SV40)など)の遺伝子発現メカニズムを説明する際に用いられる重要な概念である。2
多くのDNAウイルスの生活環においては、宿主細胞内へ侵入した後に厳密に制御された時間的順序に従って遺伝子群の転写が行われる。 その感染サイクルの時間軸の最前線に位置するのが初期プロモーターであり、これによって駆動される遺伝子群(初期遺伝子)は、主にウイルスのDNA複製に必要なタンパク質や、宿主の細胞周期を操作してウイルス増殖に有利な環境を整えるための因子をコードしている。1
初期プロモーターの上流には、転写因子が特異的に結合するための特定の塩基配列(エンハンサーやプロモーターモチーフなど)が存在している。 これらの配列には宿主細胞由来のRNAポリメラーゼや様々な転写因子が結合し、転写の開始を促す仕組みになっている。 初期プロモーターからの転写が十分に行われ、必要な調節タンパク質が蓄積された後には、後期プロモーターからの転写へと切り替わり、ウイルス粒子の構造を構成するカプシドタンパク質などの後期遺伝子が発現するようになる。2
このように、初期プロモーターはウイルスが効率的に増殖するための時間的プログラムの根幹を担っており、ウイルス感染症の分子機構を理解する上で欠かせない塩基配列領域である。 また、遺伝子工学や遺伝子治療の分野においては、目的とする外来遺伝子を効率よく早期に発現させるための発現ベクターの構築にも、こうしたウイルスの初期プロモーターの機能や配列が利用されることがある。1
参考文献・出典
- J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907049870762957 ↩1 ↩2 ↩3
- J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201007025816982928 ↩1 ↩2