HEALTH WORDS / 用語解説
回転陽極
Rotating Anode
回転陽極とは、X線管において電子の衝突による高熱を効率的に分散・放散させるため、陽極(ターゲット)をモーターによって高速で回転させる構造を持つX線発生装置の主要な構成要素である。1
通常のX線管では、陰極のフィラメントから放出された熱電子が高電圧によって陽極へ加速され衝突することでX線を発生させるが、この際、投入された電気エネルギーの大部分(通常99%以上)はX線ではなく熱に変換される。2
静止している陽極(固定陽極)を用いた場合、電子が衝突する極めて狭い領域(焦点)に熱が集中するため、陽極が融解または破損するのを防ぐためにX線の出力や照射時間を大幅に制限せざるを得ないという課題があった。3
この問題を解決するために開発されたのが回転陽極であり、陽極ディスクを回転させることによって電子が衝突する位置を常に移動させ、熱が一箇所に集中することを防ぎ、単位面積あたりにかかる熱負荷を劇的に軽減している。4
回転陽極の陽極ディスクには、一般に高い融点と優れた原子番号を持つタングステンや、レニウムを添加したタングステン合金が用いられ、熱容量を高めるためにモリブデンやグラファイト(黒鉛)などが裏打ち材として組み合わされることが多い。5
回転陽極を駆動する機構は、X線管の外部にある固定子(ステータ)と、真空中に封入された回転陽極側にある回転子(ローター)から構成される誘導電動機の原理を利用して非接触で回転させられており、通常は数千から1万rpm以上の超高速で回転する。6
近年のX線CT装置や血管造影システムなど、短時間に大量のX線を継続的または連続して照射する必要がある高度な医療現場においては、熱負荷の増大に対応するため、回転陽極の冷却性能の向上が極めて重要な技術的要素となっている。7
参考文献・出典
- 医療機器用語集: https://www.jira-net.or.jp/library/glossary.html ↩
- 放射線物理学: https://www.jsrt.or.jp/data/pdf/radiation_physics.pdf ↩
- 医用画像工学ハンドブック: https://www.jsime.org/book/handbook2020.html ↩
- 診療放射線技術学: https://www.jsrt.or.jp/data/pdf/technology.html ↩
- 現代医療機器学: https://www.jsmi.gr.jp/publication/devices.html ↩
- 医療用画像診断装置の基礎: https://www.jira-net.or.jp/tech/images.html ↩
- 日本医学放射線学会雑誌: https://www.radiology.or.jp/journal/2022_82_4.pdf ↩